第十三話 邂逅 ー壱ー

 新しい相棒として紹介されたのはなんと、昼間見かけた仮面の男だった。

驚いて何も言えずにいると、仮面の男が口を開いた。


「驚くのも無理はないが、あんたと組むことになったYだ。よろしく」

「なっ……聞いてないし、ホシがいるとこで紹介ってどういうことだよ……」


 俺は声をひそめ、ルス・ソンブラの方をちらりと見やる。

マスターが笑顔でルシアンと紅色の果実酒とミルクを持ってきた。


「まあ実践で認めさせたいのでしょう。私も聞いたときは驚きましたよ。まあ、ひとまず乾杯しましょう。これから彼女の最終幕(フィナーレショー)がはじまりますから」


 果実酒のコップを傾け氷を鳴らしながら、トリステーザも同調する。


「そういうこと。彼女の実力は私が保証するわ。それに、ルス・ソンブラの歌を聞けるのは今日が最後だもの。楽しまなきゃ。さ、Yも座って。良き夜に乾杯」


 そう言ってトリステーザは果実酒を一気に飲んだ。

それを見ていたYはわざわざ俺の横に座って仮面をずらしてミルクを飲んだ。


「あんたがどれだけ凄いかしらねえが、俺には相棒はもういらねえ。それに、あんた血の臭いが染み付いてるぜ?」


 ルシアンを飲みながら俺はYを見つめた。


「……臭くて悪かったな。一仕事終えてシャワーを浴びる時間がなかったんだ、あんたと違ってな。相棒については私の一存ではない」


 血は浴びてないが、否定する気も起きなかったので、俺はYを横目にルシアンを一気に飲み干した。


 しばらくして、ルス・ソンブラの一夜限りのディナーショーが始まった。

流石大人気歌劇歌手だけあって、一瞬にしてその場の空気を自分の味方にしていた。

感極まって客の中には泣いている者もいた。


 世の中にはこういった光に縋りつかないと生きていけない者がたくさんいる。

そいつらから、夢や希望を俺は奪う。


「どっちが悪人かわかりゃしねえなあ……」

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