第十二話 相棒 ー肆ー
電話をスピーカーにする。
かけてきた相手は、マスターだった。
「やあ、元気かい? 今夜十九時に五番地区のブラスフェミアにホシがくる。ああ、地図とホシの情報は送ったよ」
「元気ではないな。あと、終わった後に甘い酒とうまい肴でも用意しといてくれるか?」
少し間が空いてから、マスターは明るい声で答えた。
「元気が出るようなものを用意しとこうかな、お得意様だしね。じゃ、また後ほど」
電話が切れてから、俺は一服し、着替えて家を出た。
さっきのテレビといい、夢といい……目覚めが悪いな……。
ま、とりあえず向かうか……。
しばらく歩くと、五番地区が見えてきた。
俺の住んでいる地区は四番地区であり、比較的治安は安定している。
五番地区は四番地区の隣で、虚無の弾丸の支部がある。
支部といっても、規模は小さいので、武器の修理等でしか俺はあまり利用しない。
ちなみに、虚無の弾丸の本部があるのは十三番地区だ。
五番地区へ向かいながら、俺はホシの情報と店の場所、周辺の地形を確認した。
今回のホシは一人。
歌劇(オペラ)歌手で裏の顔は武器コレクターである、ルス・ソンブラという女だ。
美貌と歌声で人々を魅了する、大物歌手だ。
ブラスフェミアと書かれた看板が見えた。
店に着き扉を開けると、カランっと扉についた鈴が鳴る。
マスターがこちらを見て手を振る。
店内は、客で溢れかえっていた。
カウンターに座り、俺はメニューを見る。
さすが有名人だけあって、派手な格好をしている。
「思い悩んだような顔をしているけど、せっかくのイケメンが台無しじゃない」
俺の顎を持ち上げながらそう言う女は、虚無の弾丸本部統括長、トリステーザだ。
栗色のロングの髪をいつも横で一つに結んでおり、スタイルが良く、美人で姉御肌だ。
溜息をつきながら、俺はマスターに声をかけた。
「マスター、聞いてないぞ。それよりも、あんたがこんなとこに来てるんだよ」
「ふふ、聞きたい? 実はね、あなたの新しい相棒を連れてきたの」
トリステーザが指を指した方にいた奴を見て、俺は驚いた。
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