第十一話 相棒 ー参ー

 なんとそこにいたのは、さっき希にぶつかってきたスラム街の民だった。


「どういうことだ……なんでてめえが──」


 そう言った瞬間に、トランプが数枚飛んできた。

すぐに俺は銃で撃ち落とす。

一枚落とし損ね、俺の左目に刺さる。


 こんなことしてる場合じゃねえ……希が……希が死んじまう……


「ガッカリさせないでくれよ、黒田望。隙だらけだよ」


 仮面の男が一気に距離を詰め、ナイフを腹に刺してきた。

咄嗟に銃で撃つが、仮面の男はすぐに距離をとり、銃弾は仮面の男の腕を掠めただけだった。


「ぐっ……くそっ……」


 どうなってやがる……移動速度が人間のもんじゃねえ……


「自己紹介がまだだったね。私は奇術師(マジシャン)さ。様々な方法で殺人を愉しむのが趣味なんだよ。ああ、君は五月蝿いな。もう用済みだよ」


シュッ


「!? やめろ……やめてくれっ……!」


 俺の叫びは虚しく、スラム街の民は希にトランプを投げた。


グサッ


 投げたトランプは首に刺さり、希の叫び声はやんだ。


「嘘だろ……ま、れっ……希ええええ! てめえ……殺してやる……殺してやるっ……ぐっ……」


 銃を構えようとしたが、腹の痛みと出血で俺はよろけた。


「君は殺さないよ。だって君は私の──」


 首の後ろを手刀で叩かれ、俺は気を失った。

奇術師が言った言葉は最後まで聞き取れなかった。


 奴がなぜ俺を知っているのか、なぜ俺ではなく希を殺したのかは未だに分からない。

だが、あの日、いつか必ず奴を見つけ出して殺すと誓った。


「なら、そろそろ目を覚さないとね、黒田望──」


 奇術師の声が聞こえ、俺は目を覚ました。

急いで起き上がり、辺りを見渡すが、誰もいない。


 ふぅっと息を吐き出す。

頭を押さえながら俺は再び横になった。


「夢か……随分長いこと寝てたみたいだねえ……にしても、久々に見たな……」


 そう独言ていると、電話が鳴った。

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