第十話 相棒 ー弐ー

 しばらく歩くと、二十六番地区に繋がる山に着いた。

山道は補正されており、山を切り開いて作られていた。


「まだ続いてやがる……」

「そうだね……まるで私達を誘ってるかのようだね」

「──先に行くぞ」


 嫌なことを言いやがると思いつつも、俺は希の前を歩いた。


 数十分は歩いただろうか、血痕が途中でなくなった。

俺と希はそれぞれ武器に手をやる。

右斜め前の木の影に人影が見えた。


 希には後ろを警戒してもらい、俺は木にそっと近づき、銃を向けた。

銃を向けた先には血だらけの男が倒れていた。

ふぅっと一息つく。


「脅かさないでほしいもんだねえ……息はしてないみたいだが……つくづく悪趣味な野郎だ……」


 そう呟いた瞬間に、目の前の血だらけの男が手をだらんと広げながら突然立ち上がった。

驚きはしたが、咄嗟に俺はそいつに蹴りを入れた。

そいつは抵抗はすることなく、力無く倒れた。


「ぎゃあああああ、あづいいいいいっ! だずげでええええ……!」


 後ろから希の悲鳴と悶え苦しむ声が聞こえた。

振り返った先には、火だるまになった希の姿があった。


 俺は絶句した。

目の前で起きていることに頭が追いつかない。


 何が起きてる……?

さっきまで元気だった希が……

どうしたらいい? どうしたら助けられる?


 何も出来ず、呆然と立ち尽くしている俺の背後から突然首元に手が伸びてきた。


「ふふっ。よく燃えてるね。黒田望、何が起きてるか理解できないかい? 君の相棒は今日死ぬんだ」


 俺は振り返り様に蹴りを喰らわそうとしたが、避けられた。


 木の影に目をやる。


さっきまで男の死体がない…!?


 視線を上げると、木の上に銀色の仮面をつけ、白いシルクハットを被り、杖を持った白いスーツ姿の男が立っていた。


「ははっ。冷静さを失っているな、黒田望。君へのプレゼント、気に入ってくれたかな?」


いつからいた……?

プレゼントだと……?


「ふざけんじゃねえ! 希を……希を燃やしやがったのはてめえか?」


 銃を向け、そう問い詰めると、仮面の男は愉快そうに笑い、仮面を外し、投げ捨てた。


「なっ……!」

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