第九話 相棒 ー壱ー

 俺は夢を見た。

夢なんて最近はめっきり見なくなっていたのに。

忘れもしない、あの日の夢だ。

俺から光を奪った奴の夢だ。


 時は遡り、十年前、俺は当時一人の女とバディを組んで活動していた。

そいつの名は白田希(しろたまれ)と言い、虚無の弾丸の一、二を争うライバルでもあった。


 虚無の弾丸では、本来賞金稼ぎ同士は本名は明かさないが、希とは幼少の頃からの仲であり、仕事中以外は名前で呼び合う仲だった。

ちなみに希のコードネームはZだ。


 あの日もいつも通り、二人で賞金首を追っていた。

所在も人数も一切不明の極悪集団、「悪魔の息吹(アリントデルディアブロ)」の団員が出たとの情報を得て、俺達は「デセスペラシオン」の二十六番地区に向かった。


 二十六番地区は山に囲まれた地区であり、スラム街である二十五番地区を抜けないと辿り着かない。


 二十五番地区は治安が悪いため、普段ならば、細心の注意を払いながら、二十六番地区に向かわなければならないのだが、二十五番地区の異様な光景と異臭に目を疑った。


 建物は炎に包まれ、スラム街の民は逃げ惑っている。

見渡すと焼死体がそこかしこにある。


「これは酷いねえ。どれだけ死んだかなあ──」

そう呟いた希をチラリと見やる。


「見てて気分の良いもんじゃないねえ。だが、俺達は医者でも警察でもない。ましてや善人でもない」


「ま、先を急ぐしかないんじゃない? 他の地区に行かれても面倒だし。ほら、わざわざ血の痕を残してくれてるしね」


 希が指差した方には、死体を引きずったような痕が二十六番地区へと続いていた。

希と顔を見合わせ、頷き合い、俺達は二十六番地区へと向かった。


 向かっている途中、逃げていくスラム街の民とすれ違った。

貧しい暮らしをしていることが窺える服装だった。


 向こうからふらついているスラム街の民が歩いてくる。

俺達は避けたが、スラム街の民は希にぶつかってきた。

ぶつかった時に何度も謝ってきたので、大丈夫であることを伝え、先を急いだ。

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