第八話 休息 ー弐ー

 雨に濡れながら、俺は家路に着く。


 自宅に着き、濡れた服をハンガーにかけて干し、ジュラルミンケースを玄関に置き、服を脱ぎ捨て、シャワーを浴びる。


 シャワーを浴びると気持ちがリセットされる。

任務とはいえ、手を汚しているのに違いはなく、その事実に耐えられない時期が俺にもあった。


 虚無の弾丸には、精神を病み、第一線から退く者も少なくない。

逆に殺戮に悦びを覚え、退く者もいる。


思い出もトラウマも流れた血の数だけ色褪せていく。

撃った弾数だけ人としての感情が失われていく。

そして、虚無へと堕ちていく。


 シャワーを浴び終えた俺は左目を眼帯で隠し、バスローブを着て、冷蔵庫から取り出したビールを片手にソファに沈み込んだ。


 何故片目を隠すか気になるか?

片目は昔失って以来義眼であり、見えなくて良いものまで見えるため、仕事の時以外は隠している。


 ふぅとため息をつき、俺は煙草に火をつけ、テレビをつけた。

この時間帯はどこもくだらない番組しかやっていない。

今も画面の中では冴えない芸人が二人でコントをやっている。


 チャンネルを変えようとした瞬間、画面上の一人が突然火だるまになった。

その側にはトランプが刺さっていた。


 相方の芸人は恐怖で動けなくなり、観客の悲鳴が聞こえてきた。

しばらくして放送が中断された。


 その様子を見ていた俺は、煙草を落とした。

「見つけた……忘れもしねえ、奴の仕業だ──」


 俺はテレビを切り、煙草の火を消し、マスターに連絡した。

電話が繋がってから、俺はマスターに頼んだ。

「マスター、奇術師(マジシャン)が出た……奴のことを最優先で調べてくれ。頼んだ」


 電話を切り、俺は再びソファに横になる。

そして、深い眠りに落ちていった。


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