第3話 半魚人の襲撃

日本国が上空まで黒霧に覆われて4日


 大半の国民は避難所へ逃げ込み、住人がいなくなった街はゴーストタウンと化していが、今はいたるところで銃声が鳴り響き、まるで市街戦の様相を呈していた。


 異変に気付いたのは無人の街を巡回中の警察官達であった。

 回収する者がいなくなったゴミ集積場で生ごみを漁っている不気味な生物を発見する。感情の無い瞳にピラニアのような口と歯、半魚人としか言い表せない異形の怪物が目の前で蠢いていた。あまりにも現実離れした光景に警察官達はパトカーから降りられずにいたが、半魚人達もパトカーの存在に気付き、警察官と半魚人の目が合うことになる。

 人間を生理的に不快にさせる顔と、あまりに不気味な動きを前に警察官は動けずにいたが、突然、半魚人は感情の無い表情のままパトカーに向かって走り始めた。


「うあぁぁぁぁぁぁ! 」


警察官はパトカーをバックさせ、全力で逃げ出す。



 警視庁地下本部では「怪物と遭遇」「怪物に襲われた」という内容の報告が各地の警察官から報告され、避難所からも「怪物出現」の報告が多数入り対応に追われていた。

 警視庁は黒霧拡大による全都民の避難支援という重大な任務を遂行しており、地下本部の会議室には幹部がいつでも集まれる体制を整えていたことが幸いする。

 緊急会議が始まった頃、事態も動いていた。現地で襲われた警察官の多くが半魚人に対し発砲、またはパトカーによる体当たりで次々に駆除していたのである。怪物対策がまだ何も決まっていない状況での現場判断は、通常だったら大きな問題になるだろう。しかし、今回は発砲した流れ弾が都民に当る心配がなく、マスコミの目を気にすることもなかったため、問題と捉える幹部は少なかった。また、限定的ながら現地の警察官により怪物の情報が上がっていた。


見た目は二足歩行の半魚人である

水辺に出現している

水中を高速で泳げる反面、陸上移動は遅く、走れば逃げ切れる

衝撃波を放ち、当たれば脳震盪をおこす

頭が通ればパイプ等の狭い空間も移動可能

生物を見つけると捕食行動をとる

すでに水辺に卵を産んでいる

組織的な行動は見られない


 現状の報告をうけ、会議は今後の対応に移る。幹部達は怪物が大量に出現し、卵まで産んでいることに危機感を抱くが、すでに殉職者が出始めていたため、報告にある「怪物は組織的な行動を行わない」ことに目をつけ、早急に判断を下すのであった。



人間が組織的な行動を起こして数時間後


 都内の至る所で怪物の駆除が始まる。

 盾を装備した機動隊が隊列を組んで突撃し、分散させた怪物を物量を以て撲殺してゆく。怪物の数が多い場所はSATや狙撃班が問答無用で射殺し、警察官が足りない所では装甲車などの大型車を活用して怪物を踏み潰していった。また、少数ながらSAT顔負けの装備を持つ民間警備会社が現地の警察官をサポートしつつ、怪物の捕獲に成功する。

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