第2話 プロローグ2

 黒霧が日本方面へ広がり始めた当初、時の政府は国民の海外避難と地下避難所の建設に取り掛かった。海外避難計画は国際情勢の悪化から頓挫し、黒霧に対しても有効策がとれなかった日本国は、地下避難所の建設に国運を賭けることになる。全国に避難所が計画され突貫工事が行われたが、とても全ての国民を収容できるものではなかったため、政府は避難所に入れる国民を選別する決断を行う。

 この決定により国民の不安は爆発する。各地で混乱が発生したものの、当初の予測に反して黒霧は陸地を避けて拡大していき、どんなに小さな島でも黒霧には呑み込まれなかった。国民に陸地は安全という認識が広まったことで混乱は収まっていった。

 国家崩壊の危機を一先ず脱した日本国だったが、黒霧に包囲されるのは時間の問題であった。政府は世界各国に再度日本国民の難民受け入れを中心とした支援を要請したが、良い返事は帰ってこない。この時、世界はこれまでにない食糧危機を向かえていた。温暖化による砂漠化や海面上昇、異常気象、疫病や害虫の大規模大量発生、そして戦争・・・ただでさえ地球は人類を養えなくなっていたところに、トドメとばかりに新たな人口爆発が食糧危機に拍車をかけていた。


1億を超える人間を新たに養える場所などなかったのである。


 日本国政府は国民の保護政策を大きく転換させる。今までは国民を海外へ避難させようとしていたが、どの国にも受け入れを拒否されてしまっていたことから、日本国民の海外避難を取り下げる代わりに、避難施設の完成までできる限り資源を日本へ供給してもらいたいと世界に向けて発信した。

 この日本国の要請に世界は理解を示し、日本の友好国、資源産出国が次々に支援を表明する。


 こうして1億人の難民発生という世界の危機は回避された。そして、日本の周辺国は、追い詰められた日本国が1億総特攻を叫び自国に侵攻してくるという悪夢から解放されることとなる。

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