とある転移国家日本国の決断

第1話 プロローグ

 日本国を襲った未曾有の天変地異から4年の月日が経過した某日、日本国は戦後最大の決断を下すことになる。北海道のとある離島、今は無人島となったこの島に日本国が総力を挙げ追い込んだ怪物、その数推定10万匹。天変地異から4年間日本国を悩ませ続けていた怪物達である。

 LEDに照らされた作戦室内で、多くの人間がある一点を見ていた。


「総理、準備が整いました。」


文部科学省の職員が総理に話しかける。


「あぁ」


 感情の乏しい返事をした後、総理大臣は目の前に設置された赤いボタンを迷うことなく押す。

 少しの間隔を置き、怪物に埋め尽くされた島は、まばゆい光に包まれた。


これが日本国初の核実験であり、実戦使用であった。




遡ること17年前、日本国は未知の天変地異に巻き込まれる。


 最初に異変が発生したのは台湾の東部海域。その海域に発生した黒い霧のようなものは年々拡大し、少しずつ日本国を取り囲むように広がっていった。黒い霧の確認から10年、日本国は霧に包囲され、あらゆる通信、物流が阻害された。この現象を人々は黒霧と名付ける。


 黒霧は定位置に発生し、移動はせず、触れた生物は死滅、プラスチックやチタン、金でさえも崩壊させる未知の現象であった。日本国は事態打開のため世界各国に協力を求め、主要各国は要請に応える形で動き出す。しかし、あらゆる方法で黒霧の採取と観測を試みたが失敗、打開策すら見いだせなかった。

 日本国の周囲を黒霧が完全に包囲してから3年、黒霧は海底から成層圏まで達し、日本国への物流は完全に遮断された。


 黒霧発生から13年後の某日、決定的な異変が発生する。海底ケーブルは遮断されたものの、衛星通信は可能であったため、日本国は世界各国と協力しつつ、事態の打開を目指していた。だが、ある日の夜、衛星通信も使用できなくなったのである。

 関係機関が通信の回復に全力を挙げる中、人々は夜が明けないことに気付く。一夜にして黒霧が日本国上空を完全に覆っていたのだ。


 人工の明かりだけが光源となって3日後、黒霧は徐々に晴れていった。そして、黒霧の減少とともに現れたのは、見たことの無い星空と、半魚人のような怪物達であった。

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