第13話 ソーカ

 ジャイアントウルフの剥ぎ取りをやっている間、レンに手伝わせてソーカは木陰で着替えを終えた。


 マントを器用にスカートのようにしてやってきた。花のいい香りがする。




 落ち着いてソーカという名前の女性を見ると、スラッとしたスタイルで赤茶の髪を肩口まで伸ばしている。小さな顔に大きな美しい緑の瞳、少しアヒル口なこぶりな唇がチャーミングだ。


 そばかすが逆に可愛らしさを増している。


 おもらしはしたがとても可愛らしい女性だった。おもらしはしたが。


 逆に考えればこんなかわいい女性がおもらしをしたということはかなり貴重なことなのは疑いようもなかった。




 ジャイアントウルフの魔石


 ウルフの魔石✕8


 ウルフの牙✕2


 ジャイアントウルフの牙(極上)✕2


 ジャイアントウルフの爪(極上)✕14


 ジャイアントウルフの革(上質)


 ジャイアントウルフの頭




 首を切り落としてしまったので革の品質が少し下がってしまった。


 残りの遺体は木をくべて火をかける。


 なんとなく手を合わせる。




 マジックポシェットの種類制限が厳しい。


 個数は99だから余裕があるが、このまま魔石などの種類はどんどん増えていく。


 そして気がつく、今の戦闘でJLvがめでたく10になり職選択ができるようになっていたことに。




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 ユキムラ サナダ




 JOB:凡人


 BLv 33


 JLv 10




 力   57


 素早さ 1


 体力  1


 知性  1


 器用さ 1


 幸運  1




 JOBスキル:足捌きLv10 片手剣Lv10 パリィLv10


     クリティカルLv10 カウンターLv10 




 一般スキル:採取Lv4 調理Lv2 作成Lv2 調合Lv2 釣りLv2 解体Lv3 狩猟Lv1




 称号:ゴブリンスレイヤー




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 今の状況、商人一択だ。


 まず、マジック収納系アイテムの効果が倍になる収納上手。


 これは必須と言っていいスキルだ。


 そして未鑑定アイテムを鑑定する鑑定。


 各種製作系スキルの成長率にも補正がかかる。


 戦闘面でのサポートは殆どないが先を見据えれば、初手で商人スキルをマスターするのが定石になっている。




 JOBの中から一次職商人を選ぶ。


 凡人からのJOB選択は特にクエストもない、その場でJOBが商人に変わる。


 同時にいくつかのJOBスキルが手に入る。


 JOBスキルを10まであげると他職でも使うことが出来る。




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 ユキムラ サナダ




 JOB:商人


 BLv 33


 JLv 1




 力   57


 素早さ 1


 体力  1


 知性  1


 器用さ 1


 幸運  1




 JOBスキル:足捌きLv10 片手剣Lv10 パリィLv10


     クリティカルLv10 カウンターLv10 収納上手Lv1 鑑定Lv1 


     販売Lv1 買い取りLv1 店舗開設Lv1




 特性:秘められた才能取得経験値全てにボーナスが付きます


    生産型スキル経験値ボーナス




 一般スキル:採取Lv4 調理Lv2 作成Lv2 調合Lv2 釣りLv2 解体Lv3 狩猟Lv1




 称号:ゴブリンスレイヤー




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 ある意味、ここからが育成の始まりである。


 長い長い育成の旅。


 何の目的で育成しているのか?


 永遠の命題をプレイヤーに突きつけてくるほど、長く長く長く長く長い、育成の旅が始まる。




「師匠どうしたのぼーっとして?」




 過去のVOの日々を思い出したり、色々と確認しているとレンに声をかけられる。




「ああ、ちょっとな。それよりもソーカさんは準備できたのか?」




「ああ、なんかスースーするとか言ってたけど大丈夫そ、いてっ!」




 余計なことを言ったレンが悪いが、かなり力強いげんこつをくらう。




「なんでもありませんよユキムラ様、


 この度は危ないところをお救いいただき本当に有難うございました」




「いってーなー……」




 殴られた頭を抑えながらレンが立ち上がる。




「無事でよかった、君の母親が心配していたぞ、歩けるか?」




「はい、大丈夫です。いろいろとご迷惑かけてしまい申し訳ありません……」




 身体が小刻みに震えている。




「ほんとに大丈夫か? もしアレならもう少し休憩してもいいんだぞ?」




「ソーカのかーちゃん怖いからなぁ……イテッ」




 今度は控えめなげんこつを落とされる。懲りないやつだ。




「このままでは落ち着きませんし、たしかに母も怖いので行きましょう……」




 まぁ、落ち着かないだろう。そうだろうそうだろう。




 帰り道でもいろいろと採取しながらも、短剣で何匹かの獲物も狩っていく。


 狩猟だと投げナイフの技術もゲーム仕様になることがわかった。


 レンが何度目かわからないスゲーを連呼している。




(狩猟用の弓作ろう、たぶん戦闘では使えないけど狩猟だと使えるなこれは、 戦闘で使えないのが惜しい、ま、いずれだな、のんびりやろう)




 生産型スキルの経験値ボーナスは職を変えるとなくなってしまう。


 せっかくなのでこの職の間に村ででも生産スキルを鍛えるつもりだ。


 生産スキルは兎にも角にも数を行う。


 レシピ生産、オリジナル生産、様々なものをVOでは作れた。


 内職系や箱庭要素には変態級な思い入れがあるゲームだった。


 まぁ、それがなければ旧世代グラフィックのゲームが40年も続くことはない訳だが 永遠につづく積石とも呼ばれる一般スキルレベル上げ、だがユキムラはVOに住んでいるとも呼ばれた仙人だ。


 なんの苦もなく同じ作業を延々と、延々と、新しいスキルが出ればまた延々と打ち込む才能があった。




 ある制作のための道具を制作するための材料を採取するための道具を作るための材料を採取するための道具を店から買うためのクエストクリアに必要な道具を作るための材料を採取する。


 こんな意味の分からない苦行でさえユキムラは心の底から【楽しんで】行うことが出来る。


 生粋のMMORPGプレイヤーとして大事なスキルを持っているのだった。




 ユキムラは心の底からこの世界が気に入っていた。


 ところどころVOの要素が練り込まれ、この世界で実際に触れる感覚は現実そのもの。


 現れる人は、人間で心があり、命がある。


 自分の失われた人生がはじまっているような、そんな気分だった。




(何だっんだろうな、あのHMDは……実は俺は死んでいて、これは夢とかな……


 なんでもいいや、俺はこの世界を精一杯楽しむんだ)


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