第14話 鍛冶と採掘

「そぉ~~かぁぁぁ~~!!」




 村に入るなり恐ろしい声が響き渡る。


 下腹がビリビリとする、と同時に背筋が恐怖でゾクゾクする。


 なるほどこれは怖い。


 ソーカは村に近づくにつれて震えが大きくなってガタガタとうるさいほどだった。


 最終的には歯もガチガチとなって一人打楽器状態だった。




「ユキムラ様本当にありがとうございました。


 それにこんなに大量の食材まで、さらにこんな上等な蜜をこの量、驚きました。


 あとで村長と相談してお礼をお持ちしますね。


 さ・て・と、ソーカはちょっとお家でお話しましょうね。


 聞けばユキムラ様を危険な目に合わせたとか、ふふふ。




 そのあたりもゆっくりとね」




 氷の微笑である。ネタが古い。


 ズルズルと引きずられていくソーカ、救いを求める目でユキムラを見ても、彼には何も出来ない。




「お母さん、ほどほどに」




 せめてこれくらいは、すまないソーカ俺にできることはここまでだ。


 あとは頑張れ。ユキムラの思いが伝わることを信じて……




 家に吸い込まれていくソーカに敬礼するユキムラとレン。


 彼女の未来に幸あれ。




 ユキムラは古い記憶を呼び起こす。




(食材調達、迷子の娘、壊れた屋根、あま~い蜜。今のところクリアしたクエストはこれだよなー、あとは初めての鉱山、初めての鍛冶あたりはやっておかないとなぁ)




 さっきサクッと修理スキルで壊れた屋根を直した。


 フラグも建てずにクエスト終わらせる、VOでは出来ない無茶だ。


 状況を整理して次の一手を考える。


 こういうところはゲーム脳から脱却はしていない。


 次のチュートリアル系クエストに着手する。




 ユキムラはこの村で鍛冶のようなことをしている家へ行く。


 レンの案内で少し村外れにある一軒の建物が見えてくる。


 鍛冶台やかまどなどが置かれており、いかにもな雰囲気の石造りの建物だ。


 鍛冶と言うものは大量の水と火を扱うために、水場の下流で、さらに万が一火災が起きた時に周囲への延焼を防ぐために、この場所に建てられたと自慢げにレンが説明してくれる。




 彼の父ガッシュの考案だそうだ。


 村を囲う柵や堀なども彼が言い出し、そして最も労力を割いた。


 その御蔭で村は劇的に安全性がまして人が集まり発展したんだ、とブリッジでもしそうなほど胸を張るレンを小動物を愛でるように頭をなでてやる。かわいいやつだ。




 鍛冶屋といえば髭、筋肉、酒好き、場合によってはドワーフと相場は決まっている。


 少しワクワクしながら鍛冶場を訪れるユキムラ。




「サリナさーん、ユキムラ様がお話があるってー」




(ん? 可愛らしい名前とのギャップを攻めてくるのかな?)




「はーい」




 (どう聞いても可愛らしい女の子と言っていいほどのアニメ声だ。


 あ、これはあれだ。安田○ーカスのク○ちゃんみたいなパターンだな)




 地味にお笑いが好きなユキムラはVOプレイしながら別窓でお笑いを見るのが好きだったりした。


 


 しかしそんなユキムラの予想を裏切る事態が起こる。


 サリナさんと呼ばれた人物は見た目はまるっきり少女だった。


 身長はたぶん150ちょっと? 金色の髪がクリクリしていてどう見ても10代前半、可愛らしいパッチリとした目を不安そうに泳がしている。


 服装もホワッとした可愛らしいショートドレス。


 とてもではないが鍛冶をなりわいにしているようには見えない。




「えーっと、鍛冶をされるのはお父さんかな?」




「師匠なに言ってんだよ、サリナさんのお父さんなんて生きてるわけ無いだろ、サリナさんはこの村でずっと農具直したりナイフとか研いでくれたりやってくれてるんだぞ」




「え……? ずっと……?」




「はい……」




 アニメ声で怯えながら答えるサリナ、この絵面はどうみても幼女を叱っているようなもんだ。




「村長が小さい頃から村のために働いてくれているんだよ!」




(は!?)




 ポーカーフェイスが発動する。


 目の前の幼女はあの老人の入り口に入っている村長が小さい頃から?


 という疑問が頭をグルグルと回っているがそれは表には出さない。




「ふぁなしというのは何か鍛冶で困っていることがあればお手伝い出来ないかなと思いまして」




 完全に混乱が言葉に出てしまっている。


 しかし、その申し出はサリナにとって光明だったようで、まだ警戒心は溶けていないが少しづつ話し始めてくれた。




「じつは~、石炭の備えがおもったよりも少なくなってしまって。


 その……この間のお祭り騒ぎで……薪だけじゃなくて石炭も使ったので……」




 申し訳なさそうにそう言い出すが、ある意味ユキムラのせいなので責任を感じる。




「あとは各種鉱石もあまり蓄えがなくなってしまって、細かな仕事も詰まっていてなかなか採掘にも行けなくて……」




「採掘はサリナさんが?」




 思わず聞いてしまう。




「そうだよ師匠! サリナさんは強いんだよ!


 とーちゃんがこの村で唯一勝てない、一生足を向けて眠れないって言ってたよ!」




 人は見かけによらない。やはり女性は怖い。


 ユキムラの中の女性への警戒心がさらに上がったぞ! やったね。




「な、何にせよそちらもお手伝いしましょう。


 もしよろしければ採掘場所を伺っても?」




 よくよく話を聞くと蜘蛛の巣あたりの山場の表面に出ている場所らしい。


 ユキムラはサリナから採掘道具(基本)をお借りして採掘へと出発することになる。


 

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