ドーナツの穴に盗みの美学(ロマン)を求めるのは間違っているだろうか? ~名声ほしさで盗みに入れば時空とび越え異世界デビュー!?ドーナツ係に任命されつつある毎日だけど、俺に盗めないものはそんなにない!~

川乃こはく@【新ジャンル】開拓者

プロローグ 


 諸君らはドーナツの穴についてなにか考えたことはあるだろうか。


 そう。あの丸くて、甘い生地を油で揚げて食べるあの魅惑の食い物だ。

 たかがお子様のオヤツ代表な食べ物だが侮ることなかれ。

 実は、あの丸く、底知れぬ穴のなかには、この世の真理が詰まっているらしい。


 幼少の頃から爺さんに盗みの極意を仕込まれ、修行の果てに一心不乱にドーナツを揚げまくった俺が言うんだから間違いない。


 きっとドーナツの真ん中にある丸い穴はきっと何かすごいお宝があって、それを盗まれないよう、神がその存在そのものを隠したからああいう形になったに違いない。


 だから俺たち、泥棒はドーナツの穴に自分自身の理想を追い求める。

 存在しないものを盗む、そんな大泥棒へと至るために。

 だから――


「クロト君、ドーナツおかわりー」

「かしこまりました。ソフィアお嬢さま」


 俺は子供のオヤツ係に甘んじる気なんてさらさらないんだからな!?

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