第2話 そこかいっ?

「では、小次郎君・・・」

「え・・・?」


「え・・・?じゃない・・・」

「だから、なに・・・?」


「鹿肉・・・・」

「鹿肉ぅ~・・・?」


「早く、だしてよっ・・・」

いら立つ、口調で。


「えぇ~、冷蔵庫には入ってないよぉ・・・」

後ろ姿もピカピカの白袴。


「じゃあ、捕ってきて・・・」

「え・・・?」


「え・・・?じゃない・・・捕ってくるの、鹿・・・・」

「俺がぁ・・・?」


「そう、小次郎君が・・・」

「い、今からぁ・・・・?」


「そう、今から・・・」

「えっー、聞いてないよぉ~・・・」


お約束のギャグをかまして。

小次郎君、下手に消えます。


5分後。

早っ。


小次郎君、上手から。

イノシシ担いで登場。


「ただいま、帰りました~・・・」

驚きの表情の武蔵君。


「小次郎君、血だらけじゃないの?」

「ちょっと、肋骨、折れてますぅ・・・」


「命がけのギャグだな。それより鹿じゃないの・・・?」

「鹿は足が速くて、代わりにイノシシが突進してきたので・・・」


「切ったの?ツバメ返し・・・?」

「いや・・・後ろから体当たりされて・・・」


「逃げてたら、勝手にこいつが木にぶつかって・・・」

肋骨、押さえながら、小次郎君。


「じゃあ、さっそく、料理を・・・」

「心配せぇよっ・・・」


番組は続きます。


「小次郎君は、野菜切ってて・・・。僕は肉の方、やるから」

「あいよぉ・・・」


和やかに続きます。


「でもさぁ、武蔵君・・・」


小次郎君、鮮やかな包丁さばき。

小気味いい音がタンタンと。


「何・・・・?」

キッチン台の下をのぞく、武蔵君。


「あの時さぁ・・・」

「あの時ってぇ・・・?」


「巌流島・・・決戦の時だよぉ・・・」

「ああ・・・あれぇ・・・?」


ゴソゴソと。

何かを探してます。


「何で、遅れたん?自分、けっこう、イライラしたしぃ・・」

「ゴメンゴメン、腕時計、遅れちゃってたみたいで・・・」


「だから日本製にしろって、武蔵君、見栄っ張りでオメガ好きやし・・・」

「あの時は、シチズンですぅ~!」


キッチン台から顔を出して、口を尖らす武蔵君。

両手に何か、持ってます。


「じゃ~ん!」


二本の包丁をクロスさせます。

満面の笑みです。


「これぞ、二刀流!」


(ここ、かい・・・?)

(ここ、です・・・)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る