第46話「村の崩壊」

…環とルーザは村へ戻ろうとしていた


何もない草原をゆったりと歩いて戻る。その移動は軽めだ


「ねえねえ水の魔法はともかくどこから来たの?」


ルーザが言うと環はしどろもどろなことをいう


「うーん…私、どこかで死んだことは覚えているんだけど、あとはわからない」


…どういう意味だろう


「ふうん?記憶喪失?」


記憶喪失。そう言うと環は首を横に振る


「それもわからない。ちゃんとどこかで死んだことはわかっている。ただそれだけだ」


…ルーザのほうがよくわからない


だがいいだろう。神の紋章を持つ人間に出会えたのだから。きっと血漿族なんて蹴散らしていけるに決まっている


そんなことを思っているとそろそろ村に着く


「環、ここはね。のんびりした村だからきっと…」


ルーザは気づいた。環も気づいた。村がおかしいことを


「…な!」


そう。村が半壊していた。なぜか人もいない状態で


門に入り急いで人を呼ぶ。誰もいないのか?


「おーい!誰か!村長さん!みんな!」


しかし誰もいなかった。もしかしたら血漿族がここを荒らしたのか…!?


「誰もいないな」


「そんな馬鹿な…さっきまで普通だったのに…!」


「ぐるるる…」


…この声。大敵のクリーチャー、血漿族だった


血漿族は大きな声で反応して近寄ってきた。四足歩行のクリーチャー、人型のゾンビのようなクリーチャーがいた


もしかしてこいつらが村を滅ぼした…!?ルーザは怒りが込み上げてきた


「こ、こいつら…!!」


「安心してくれルーザ。私がやる。ルーザは後ろで援護して」


環が一歩近寄る。環は紋章を掲げて呪文をいう。ルーザはまだ何かあるのか!?と思った


紋章の手の甲から水が浮かび上がる。その大きさはでかい。そしていう


「水よ!敵を打ち砕く酸性の雨にならん!アシッドボム!」


ばしゃあああ!!その水、いや酸性の水はクリーチャーに向けて発射した。素早く、そして即効性のある水はクリーチャーに激突した


「ぎゃあああ!!」


クリーチャーは水を受け、やがて溶けて消える。水の力!?こんな技聞いたことない


ばしゃあああ!!どんどん酸性の水があちこちのクリーチャーにぶっかけた。その力、溶けるほどである


「ぐああああ!!」


四足歩行のクリーチャー、ゾンビのクリーチャー。すべて溶けて消えた。一面の血漿族は消えた


…のは良かったのだが、血漿族から何か体のようなものが転がった


…それは人の腕だった。環とルーザははっとした。もしかしてかぶりついてそのまま残っていたのでは…!


「な、なんてこった…」


「こいつらきっとそのまま食べて胃の消化してないんだわ」


腕のみなのであまりにもぐろかった。しかし、これはまだ終わりではない。きっとボスの血漿族がいるはずだ


「他のみんなは…」


「…わからない」


血漿族とは人肉も食らうクリーチャーなのか。環はぞっとした


「…どこかに血漿族の地帯はあるか?」


「そこも探しましょう」


村を駆け抜ける。しかし、血漿族にやられていた人間たちが多かった


奇襲だろう。爪で斬り裂かれてしまい絶命した人間。丸呑みにされてきっとドロドロになった人間。色々といた


環は思ったがますます許せないクリーチャーという認識になる。こんな奴らがいたらこの世界は終わりだ…!


逆の門を出ていたらそれっぽい黒い変色した地帯があった。ここだ


環とルーザは近寄る。すると大きいクリーチャーが出てきた。こいつか!絶対許せない!


「…援護。頼む」


「オーケー」


大きいクリーチャーに近寄る。クリーチャーは環が近寄ると即座に攻撃体型になる


環は神の紋章に力を入れた。その水の力はとても絶大な強さを誇る、魔法であった


「ウォーターソード!」


ぶおおおおん!右手の甲から水柱が立ち、剣の形になる。これでこの大きいクリーチャーを切り裂く予定だ


「ぐああああ!!」


大きい口をして襲いかかる!しかし環は冷静に、村を滅ぼした大敵を切り裂く!


「うりやあああ!!」


ずばっ!!クリーチャーの右手を切る。その切り口から腐臭のする血が流れた


「がああああ!!」


その刹那、左で襲おうとする。しかし、ルーザのライフルが左手をぶっ放す!


「ルーザ!」


「今よ!首を飛び切りなさい!」


クリーチャーの左右の手が無くなって環は首を狙った!


「しねえええ!」


ウォーターソードは首を切る!クリーチャーはそのまま首を切られ体形を崩し、撃沈


このバトル。環とルーザのコンビで勝利した。しかしまだ終わりではない


「次は地帯の浄化だ」


黒く変色した地帯に両手を置き、環は力を入れた


「…はぁ!」


ぱぁぁぁ…その地帯から光が満ちて、やがて浄化した。これこそ環が持つ力だった


終わったらルーザは近寄る。そんな力があるなんて…!


「すごいわね!浄化、できるんだ…」


「これも頭で思ったことを実行に移しただけだがな」


だが、笑顔は無い。なぜなら村は滅んでしまったからだ


「…ある程度、遺体を集めてお墓を作ろう」


「そうね」



遺体は少なかったが、それでもいた。環とルーザはゆっくりと運び、遺体を土に埋める


環は思った。血漿族を倒さないとこういうことになる。絶対滅ぼさないといけない。人間の大敵だ


「…これで、私もここにいることは無くなったわ」


「どうするんだ、ルーザ?」


ルーザは環の顔を見て言う


「貴女に付いていく。貴女は旅をするのでしょう?だったら、私がいたほうがいいと思う」


ルーザは自分よりもやや小さめの環を見て言う。環は目を見て言った


「なら、行こうぜ。ずっと付いてきていいぞ」


「…ありがとう」


そう言うとルーザは悲しくも希望を持てるような環の存在に感謝することになる


「…この辺で近い場所ってあるか?」


「そうねえ。魔王がいる街にでも行ってみましょうか」


魔王?大丈夫なのかそれ


「お、おい魔王って…」


「ううん。悪さをする魔王じゃなくて色々な闇属性の部下を従えているから愛称が魔王なんて呼ばれる人よ。同じく血漿族を憎んでいるわ」


そうなのか。まずはそこへ行ってみよう


「わかった。行こう」


「ええ。付いていくわ」


お墓を立てたところから離れる環とルーザ。次の目的地が決まった



血漿族の恐怖


まだこれからあるのだろう



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