第3話

 キャンプはリーダーの大河くんを中心に問題もなく進んでいった。大河くんが暴走しそうなときは桂さんがうまく誘導してくれる。丈くんは細かいことに気に掛けてくれご飯も上手。にいなは明るくムードメーカー。


 ずっとうまくいっていたのにある日、みんなの様子がおかしくなった。普通の話をしていたはずなのに突然言い争いを始めた。


「ダンスで選ばれたって言ってもダンスが何の役に立つんだよ」

「それを言ったら数学ってなんなの」

「うるさいですよ」

「桂は何にも興味なさそうで、他人にも興味持ったらどうだ?」

「あなたみたいな脳筋に何も言われたくないですわ」


「なんでみんなどうしちゃったの?そんなこと言う人たちじゃなかったじゃん。」


 僕がそう言うと、四人がはっと気づいて無言になる。


「なんか訳わからなくなった…ちょっと頭冷やしてくる」


 そう言ってそれぞれみんな別々のところに向かって歩いていく。


 待って!どうしよう。誰を追いかける?


 僕は文句を言われたときのにいなのショックを受けた顔が気になってしょうがなかった。あんな顔をさせたままじゃいられないよ。


 僕はにいなの行った方向に走った。


「にいな、大丈夫?」


「うーん、どうだろう」


 にいなはうつむいている。


「正直ちょっと痛いところつかれたなって思ったんだ。ダンスが何の役に立つんだろうって。しかも、わたし自身の気持ちも弱いし。ダンスの大会いっぱいでてるけど、いつも頭の片隅で失敗して笑われたらどうしようって思っちゃってるの」

「こんなわたしが魔女を倒せるかな?」

 にいなは涙目になりながら言う。


 華やかに見えるにいなもこんな風に悩んでいたんだね。僕なんかが励ましてもいいかな?でもここで励まさないとかありえないよね。


「にいなのダンスは人を強くするよ。僕もいつも元気をもらってるし。大丈夫。にいなは失敗しない。もし、失敗しても僕が全力で観客席から応援するから落ち着いて」


「それ大丈夫?恥ずかしくない?」


「全然。だから、にいな強い気持ちを持って。そしたら魔女だって倒せるから」


「ありがとう。なんか安心した。誰かが応援して見ててくれるって安心するね……うん、頑張れそう」


「丈くんにも失礼なこと言っちゃった」


「さぁ。戻ろう。みんなもきっと頭が冷えて反省しているよ」


 戻るとみんな集まっていて自分の言ったことを謝っていた。本部からの知らせによると、これも魔女の力の影響らしい。


 魔女の力が強くなっていて僕らを揉めさせたりしてどうにか黒歴史を植え付けてやろうとしているらしい。僕はまだ14才になりたてだからみんなよりちょっとだけ影響が少ないみたいだ。


「何があるかわからないみんな気を引き締めていこう!」




 山道を歩いていると、にいなの足取りが悪い。


「にいな、顔色悪いけど大丈夫?」


「ちょっと疲れちゃって。」


 にいなはダンスをやっているけれどそこまで体力があるほうではなくて、よく疲れていた。僕は軟弱だけど、意外と体力だけはあった。


「荷物持つよ。あとこれ飲んで。疲れとれるから。」


「ありがとう。でも平太が疲れちゃうでしょ、いいよ」


「大丈夫。取り柄はないけれど体力だけはあるみたいだから、気にしないで」


「うん、ありがとう」



 今日の休憩ポイントに到着した。すると他の学校の生徒のグループもあとから来た。


「なんで?」


「ここら辺が魔女の出る確立が高いって報告があって、追加で俺らも召集されたんだ。」


 もう一つのグループのリーダーのような人が言う。


 そうなのか、もしかしたら魔女は本当にこの上にいるのかもしれない。ちょっと身震いする。


「平太…わたしちょっと怖いかも…」


 にいなが震えている。


「大丈夫。みんないるし。僕も何かあったらにいなを守るよ。」


「平太…」


 この調子で行ったら目的地は明日着く。そこに魔女はいるのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る