第3話 女騎士(巨乳)は、どんな容姿になろうと可愛い
「ご通行中の皆様、失礼します! 世界で一番かわいい女性が通ります! 道を空けてください」
「や、止めろぉ! 恥ずかしいってぇ!」
ジェイスの
最愛の人からの頼みを受けても、ジェイスは靡かない。
「どうか
「ここまでする必要ないだろう……!」
あまりの恥ずかしさに、エメリーは顔から火が出そうだった。
そんなエメリーを抱きかかえたまま、ジェイスはブツブツと何やら呟いている。
「最愛の人が、腕の中で、その身を僕に
「し、静かにしろ! 目立つだろ!」
これ以上、私の
長い
そんな気持ちの数パーセントが伝わったのか、ジェイスは真面目な面持ちで返事する。
「お言葉ですが、エメリー様の魅力は、常に
「も、もう何も言うな! お願いだから!」
エメリーの気持ちは、
ジェイスの暴走は続く。
「エメリー様、少し太ももの肉付きが良くなりましたね。戦場で駆け回っていた頃の、全く無駄のない引き締まった身体も素敵でしたが、今も愛らしいですよ」
「ば、馬鹿!」
とうとう、エメリーが、ジェイスの腕を振り払って地面に降りた。
つまり、本気で降りようと思えば、いつでも降りられたのだ。
だが、ジェイスは
彼女は、頬を膨らませて言い捨てる。
「ふん! どうせ、私はデブだ!」
「そんな事ありません!」
ジェイスは真っ向から否定した。
「それに、エメリー様が、どんな容姿になろうと、私は愛し続けます」
「……口では何とでも言える。無根拠で無責任な
その呟きには、彼女の実感が乗っている。
◇
エメリーは、戦闘力だけが、自分の有する唯一の価値だと信じている。
そんな彼女が怪我をして、前線で闘う能力を失った時。
軍の上層部は、即座にエメリーを戦線から離脱させ、軍からも半強制的に切り離した。
理由は、エメリーが役に立たなくなったから――ではない。
エメリーを、守りたかったのだ。
幼子の頃より、志願兵として戦場に立ち、闘い続けてきたエメリー。
当時、彼女と共に戦場に立ち、現場で指揮を執っていた上官らが昇進し、今や国軍の中枢を担っている。
つまり、上層部にとって、エメリーは娘も同然なのだ。
だからこそ、彼女を見殺しには出来なかった。
勿論、軍隊の指揮に私情を差し挟むなど言語道断。
そんなこと、彼らは百も承知だ。
それでも、彼らはエメリーを守った。
しかし、エメリーはそれを知らない。
ゆえに、自分は切られたと思い込んでいるのだ。
◇
明るく振舞っているが、エメリーは、いつも無力感に苛まれている。
闘えない自分に価値は無いと、本気で思っている。
そんな彼女の支えになりたい。ジェイスは心の底から願った。
だが、言葉にしたとて、エメリーは信じないだろう。
だから、彼はエメリーを優しく抱きしめた。
「へぁっ!?」
往来での熱烈な
ジェイスは優しく
「私には、こうやって、無責任に愛を伝えることしか出来ません。言葉は無力ですからね」
「うぅ……」
潤んだ瞳で、エメリーはジェイスを
「エメリー様、好きです。本当に、大好きです。愛してます。ずっと一緒にいたいです」
「こ、言葉は無力じゃなかったのか!?」
「はい。この言葉には、何の意味もありません。ただ僕が、言いたいから言っているのです」
そう返されては、反論できない。エメリーは赤い顔を伏せた。
その隙を突いて、ジェイスがまた、彼女を抱え上げる。
「さて、帰りましょう」
「も、もういいって! 下ろせ!」
いつでも降りられるのに、またそんな台詞をエメリーは叫んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます