外伝 異能管理局の長は何だかんだ超絶有能らしいです
私の名前は理事 測演
異能管理局という仕組みの発案者であり、創設者の一人であり、過去には官僚として日本の為に働き、今は私の作った異能管理局の代表をしている。
自分でいうのもおかしな話かもしれないが、私は日本の為にひたすらに働いて来た人間だ。
28歳の時に官僚の世界に入ってから、ひたすらに努力を重ねて、少しでも日本がより良い国となるように文字通り死ぬ気で働いた。
魔法と異能と言う不思議な現象が出現したことによる混乱にも必死に耐えた。
耐えて耐えて日本の治安を少しでも良くするために、日本をより良い国にする為に、異能管理局というシステムを考えて創り出して、創設して、そのまま代表となり、日本の為に全てを捧げて来た。
そんな私は極一部の人しか知らない秘密がある。
それは、私が異能力者であるということだ。
私の授かった異能は【予測演算】・・・充分な情報さえあれば予測して演算してありとあらゆる全ての事柄の未来及び結果を予測するという異能だ。
デメリットとしては1日に1回しか発動出来ないということと、情報が足りていないと間違った予測が出てしまうということだ。
それでも逆に言えば1日に1回も一切のデメリットなしで、情報さえあれば疑似的な未来予測が可能という異能の中でもトップクラスの当たりに分類される強力な異能だ。
だからこそ、私は私が最も信頼できる部下2名と私の親友であり官僚時代にお世話になった恩師でもある、今の総理以外にはこの異能のことは秘密にした。
この力はやろうと思えばこの世界に存在する全ての株価を予想したり、世界の起こるであろう戦争を予想したり、次に他国が行うであろう政策すらも予想出来るだけの力を持っている。
それはやりようによっては日本という国が世界を牛耳れる可能性すら持っている。
だからこそ、そういう理由には使えなかった。
強すぎる力は破滅を呼ぶ。
という言葉がある。
その通りだと思う。
この異能【予測演算】は強すぎる力である。この力に依存をしてしまっては駄目なのだ。
依存する対象は個人ではなく組織でなければならない。
とある小説に出てくる言葉であり、私の気に入っている言葉の一つである。
この【予測演算】を多用すれば確かに日本という国はより良くなるだろうし、大きな利益を確保できるだろう。
しかし、もしも【予測演算】がなくなったら、具体的に私が何かしらの拍子に死んでしまったら?
どうなる?
この答えは【予測演算】しなくとも、簡単に分かった。
破滅である。
ずっと未来が分かっていたのにいきなりその未来が分からなくなる。
これを例えるなら、ずっと目が見えてたのに、いきなり目が見えなくなるようなものだ、そんな状態でまともな国家運営が出来るか?
否だろう。
遠からずに国家として破滅するのが簡単に理解出来る。
だから【予測演算】はあくまで必要最低限しか使わない。
この国を私が死んだ後もより良い国とする為に。
と、長々と述べた私、理事 測演であるが、もう既に私は【予測演算】という力に依存してきっていた。信頼しきっていた。
それによって最悪の失敗を犯してしまったのだ。
ことは半年と少し前に遡る。
私はとある事件をきっかけに上野泰斗という化け物を【予測演算】してしまった。
アレは一言で言えば危険だった。
恐ろしく危険だった。
その身に纏う雰囲気はとても9歳児ではなかった。暗く重くひたすらに禍々しかった。
私が初めて上野泰斗という人間の目を見て抱いた感想は、頭のネジが外れた狂人、もしくは、異常な精神性を持った人の皮を被ったナニカであった。
それこそ人間ではなく世界を滅ぼす魔王と言われた方がしっくりと来た。
アレは、日本という国をひいては世界を維持する為に殺さねばならない、そう私の中の直感がけたましく警戒音を鳴らした。
ただ、今はまだ罪は犯していなかった。
しかし、何かしらの拍子に簡単にあの化け物は罪を犯すであろう、嬉々として全てを蹂躙するである、嬉々として全てを破壊するであろう、嬉々として全てを塗りつぶすであろう。
そんな、ナニカを感じた。
だから殺そうと決めた。
周りが全員反対する中、私だけはあの化け物を殺そうと必死に述べた。それだけのナニカがあったからだ。
そして私は【予測演算】を使ってしっかりとあの化け物を殺せるだけの戦力を整えて、殺そうとした。
だけど失敗した。
失敗した上で私はあの化け物によって洗脳をされてしまった。
偶々、私の最も信頼する部下の一人であるナンバー・ツーが私の異常に気が付いて光魔法を使って私の洗脳を解除してくれなかったら、今も私は洗脳されたままであっただろう。
洗脳から解除された後、今度はもう一度あの上野泰斗という化け物について【予測演算】した。
結果は絶望だった。
おそらく異能管理局と警察で精鋭部隊を作っても勝てるかどうか怪しいライン。
更に言えば【予測演算】はまだ強さを隠している可能性があるという結論を私に出して来た。
初めて乾いた笑いが出た。
恐怖が一周回って私を冷静にしてくれた。
幸いなことに、あの化け物はまだ私が洗脳されたままだと思い込んでいる。その上で、まだあの化け物は人間に対して好意的であり、日本を愛してくれている。
だから懐柔をしようと考えた。
どうにかしてあの化け物がこの国の味方でいれるように、あの化け物が日本を見捨てないように見限らないように、可能ならば情という鎖で雁字搦めにして、この国に拘束しようではないか。
これは私の償いのようなものだ。
安易にあの化け物を処理しようとしてしまった私の償いだ。
私はこれからの人生全てをかけて、どうにかして、あの化け物が悪に堕ちないようにしなければならない。
そして可能ならば、あの化け物を殺せるだけの組織的な戦力を体制を整えなければならない。
全てはこの国の為に。
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