9歳11か月 秘密結社【異上魔上】

 2020年 2月〇日


 件の異能【凶毒】による先輩3人毒殺事件から1週間が立った。


 で、まあ、更にとんでもないことが起こった。


 何があったかというと、異能【凶毒】持ちの先輩が失踪したのだ。

 何を言ってるか分からないかもしれないが、そのまんま失踪したのである。


 そう、失踪、誘拐でも行方不明でもなく、失踪。

 つまり、行方をくらましたということである。

 確実に故意に自らの意思で何処かに身を隠したのだ。


 もちろん、先輩はって、なんか先輩って書いてると他の先輩に失礼だな。中々にあれな人(同級生3人毒殺してるのに一切反省せずにもっと殺させろって感じの頭言ってる人)やし。そもそも関りだってまともにないし、いまだに名前すら覚えてないし、そうだな・・・普通に凶毒でいいや。

 よし、決めた。これから凶毒という名前で呼ぼうというか書いていこう。


 そんな凶毒は、おそらく誰からの手引きによって失踪したということが予想される。

 だって、そうだろう。一応異能管理局も馬鹿の愚者ではない。

 凶毒という危険人物に監視は置いていたし。もしもの時はすぐに対応が出来るように準備もしていた。

 具体的には監視の人数は6人、全員熟練の隠密であり、何人かは有用な異能を持っているというおまけつき。更には何かあった際は凶毒相手に強い異能【凝視破壊】を持ったセブンの称号を持ってるかなり強い金髪のお姉ちゃんがすぐにその場所に駆け付けられる場所でしか行動しないという行動制限をかけて、最長でも凶毒が何か事件を起こしたら10分以内に殺せるように準備もされていた。

 それ以外にも耐毒装備の専用部隊も用意されていたし、狙撃手も配置されていたらしい、それこそセブンが来なくても、1分以内に始末出来るような準備がされていた。


 いや。こう書いて見たら過剰だなって思うけど、俺が洗脳した異能管理局の長は、俺が洗脳する前から、こういう強い異能と強い悪しき思想を持った人間は徹底した監視体制と二重三重の罠を使って確実に始末出来るように、最悪の事態がおきないようにひたすらに気を付けていたらしい。


 平和維持という点で見ればそれは凄く納得がいくものだし、被害が出てからでは遅いので、行動としては100点満点だなって思ったわ。

 俺に洗脳されてしまったけど。何だかんだで異能管理局の長、めちゃくちゃに優秀なんだよな。

 いやまあ、俺に洗脳されてからこの国の為に平和の為に尽くすようにって命令を出してるから更に優秀になってるけど。


 まあ、それでも失踪された訳なんだけどね。


 はい。


 いや、マジで何を言ってるんだお前って思うだろ。


 俺もそう思う。

 でも、残念ながら事実なのだ。覆しようのないクソみたいな事実なのだ。


 そんでもって監視についていた6人は毒殺されていた。


 は?

 だろ。


 俺もそう思う。


 この異常事態を受けて異能管理局は凶毒を重異能犯罪者として認定。

 かなりの人員を出して凶毒を捕らえるないし殺そうとなる訳だ。


 でもまあ、見つからない。見つからない。

 俺は関係はないのだが。一応捕らえたのは俺だったし。同じ学校な訳だし、このまま放置して、もしも最悪の事態となったら流石に良心が痛むので、ヤミちゃんを50体程放出して探させた訳だ。


 で、見つかりませんでした。


 はい。終わりです。詰みです。絶望です。


 なんて思ったらとんでもないご都合主義展開が起こりました。


 小篠さんが啓示を授かったのだ。


 いやマジでご都合主義過ぎるだろって思ったわ。俺もそう思う。

 だけどありがたいことには変わりはない。

 ただ、その啓示の内容がまあ、何というかとんでもなかった。


 簡単に啓示の内容を要約すると「凶毒は秘密結社【異上魔上】という犯罪組織の協力の元、自分が異能管理局ひいては国によって殺させることを知り、秘密結社【異上魔上】の力を借りて脱出、その後秘密結社【異上魔上】に加入して自分を殺そうとした異能管理局に復讐を誓う。で、最終的には将来、異能管理局及び警察を含むこの国全てを潰すレジスタンス勢力の英雄になる」

 とのことだった。


 まあ。うん。


 ライトノベルの主人公ですかってみたいなことになってるなって思ったわ。


 いや、だって考えてもみろよ、虐められていたら異能に覚醒、その異能を表向きは暴走させてしまって虐めていた人たちを毒殺、それを危険に思った異能管理局及びこの国に秘密裏に殺されそうになる。

 そこを秘密結社【異上魔上】に助けられる。

 そして、異能管理局ひいては国に対する復讐を誓い、レジスタンス勢力の英雄になる。


 なるほどね。


 ライトノベルの主人公みたいだな。


 まあ、あれだけイッてる発言をする主人公嫌だけど。まあライトノベルの深淵を除けばもっと下種で屑な主人公いっぱいいたわ。

 それはどうでもいいか。

 

 問題なのは凶毒がレジスタンス勢力の英雄になることだ。


 当たり前の話だが、それを俺が許すわけがないよって話だ。


 俺は今の日本が好きだ。

 異能に対する差別は、まあ、なくはないが、それでも100人に一人が異能持ちだ、そこまで酷いものではない、強力な異能の持ち主は定期的にカウンセリングを受けさせられたり行動に制限をかけられてたりもするが、別に酷い扱いなんてのはない。むしろ協力金として少額だがお金が支払われるくらいだ。

 魔法使いはむしろ動画配信者として大成して、ちやほやされる。

 異能を使った犯罪を犯せば、非異能力者よりも重い刑罰を科せられるが、異能力者と非異能力者だと前者の方が割合的には犯罪を犯しているのだ。しょうがないというやつだ。

 その他、場合によっては危険な異能力者を処理したりしてるが、この日本の平和維持という大義名分がある。

 遇に政治家連中や大企業の社長さんやら役員さんが有用な異能力者を異能管理局と手を組んで自分の陣営に引き込んだりして問題になるが、別にしっかりと報酬を払っているし、本人も納得してるのだから何も問題はない。

 

 少なくとも日本という国はかなり平和で世界トップレベルの治安の良さを誇り、医療も充実しているし、何かあれば警察なり異能管理局なり、すぐに誰かが駆け付けてくれる。

 そして何よりも娯楽文化がとても優れている。

 ライトノベルがあって漫画があってアニメがあってゲームがある。

 色んな娯楽に溢れかえっていて、それを簡単に楽しむことが出来る。

 

 そんな俺の愛する日本を潰すレジスタンス勢力の英雄ねぇ。

 許せるわけがないよなぁ。

 それこそ、その争いによって無関係な人、具体的には俺の好きな娯楽を生み出している先生方に危害が加わったり仕事に支障が出たら許せるか?

 

 許せるわけがない。


 だから、俺は今決めたという訳だ。


 いや、今じゃないね、ついさっき小篠さんの啓示の内容を教えて貰った時から決めていたね。


【秘密結社【異上魔上】及び日本の癌となりうる可能性を持った犯罪組織全てを潰すということを】


 さあ、覚悟しろよ。

 小篠さんの啓示が絶対ではないということをこの世界最強の俺が証明してやるよ。


 以上

 終わり。


―――――――――――――――


 次回から犯罪組織対立編です。

 主人公が強すぎるせいで、そこまで時間かからず割とすぐに終わりそうな気がしてしょうがないです。


 面白いと思っていただけたら星やハートを頂けると嬉しい限りです。

 

 

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