第6話 分岐点

第6話


前の俺は何て答えたのだろうか?


もう、覚えていない。


覚えているのは、此処から直ぐに彼女を助けないと死が待っている事だ。


「………涼菓ちゃん。」

「ゼロくん………何?」

「これから言う事、やる事、起きる事は訳の解らない事の連続だと思う。」


でも、だからこそ………


「俺を信じてくれ!」

「えっ………」

「今助けるからな、涼菓ちゃん!」


思い切り抱き着き、彼女を無理矢理に移動させる。


その瞬間、今まで俺達が居た場所に………


キキィッーーー!!!


「はぁ、危なかった。」

「えっ、車!?えっ、何!?ゼロくん、一体何が起きてるの?」

「う〜ん、色々あるんだが、説明するのが面倒って、危ない!」


キキィッーーー!!!


先程避けたばかりなのに、次の暴走車がやってきた。


そして、塀にぶつかって静止した。


ふぅ、助かった。


………この家の持ち主は災難だな。


しかし、偶然にしても出来すぎだな。


「巫山戯るなよ、一回で終わりじゃないってか!?クソゲーにも程があるだろうが………」


これも歴史の修正力という奴なのか?


それとも、彼女が此処で死ぬという運命なのだろうか?


「………巫山戯ろ。」


そんな物、全部丸めて引っ括めて覆してやるよ!!


「行くぞ、涼菓ちゃん!」

「えっ、ちょっと!きゃっ、何してるの!?」


戸惑う彼女を無理矢理に背負い、走り出す。


次が直ぐに来ないとも限らんからな。


しかし、重………はっ!?


「ゼロくん、色々聞きたい事があるけど、今変な事を考えてない?」

「な、何も考えてないから大丈夫だぞ!」


こ、怖い!!


思わず気絶しそうな位の威圧感だ。


よし、喋ったら墓穴掘りそうだし、心の中で一応誤魔化しとこう!


軽い、軽いにも程がある!


コイツ、ちゃんと食べてるのか?


………俺、こんな時に本当何やってるんだろうな?


「はぁはぁ、車の音は………聞こえないな。でも、一応警戒はしとくか。」

「ね、ねぇ、大丈夫?」

「大丈夫だよ、涼菓ちゃん。ほら、そんな心配そうな顔するな。良い顔が台無しだぜ?」


ニィっと笑って見せる。


だが、彼女の顔は晴れない。


まぁ、当然か………


今の彼女は困惑の連続だろうしな………


ちゃんと解決したと明確に解る物があれば良いのだが………


『そんなのある訳ないじゃん。』

「誰だ!?」

「ぜ、ゼロくん!?どうしたの!?」


謎の声が何処からか響いてくる。


だが、この様子だと涼菓には聞こえてないみたいだ。


しかし、この声………何処かで………


「って、危ない!!」


油断していた隙に、ブウゥンッとバイクが突っ込んできた。


マジかよ、それも有りなのか?


ていうか、運転手は何してんだ?


「くそっ、此処も駄目か!」


せめて、何か建物の中に………


「ゼロくん、何なの!?一体、何が起きてるのよ!」

「大丈夫、大丈夫だから!俺が命に替えてでも俺が守る!だから………」


キキィッーーー!


くそっ、また車か!


しかも、今度は避けれそうにない。


なら……… 


「すまん、どうか逃げてくれ。どうか、生き延びてくれよ涼菓ちゃん!」

「えっ、ゼロくん!?」


俺は全力を振り絞って涼菓を投げる。


上手く着地して逃げてくれる事を願おう。


ああ、もう目前じゃねぇか………


ちくしょう、俺の家系って車に呪われてるのか?


天敵なのかなぁ………


「ゼロくん!!!!」


ばいばい、涼菓。


続く

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