第5話 時は流れて…

第5話


その後、何事もなく小学校に入学できた俺達。


そして、それから数年はいつも通りに過ごす事が出来た。


彼女が死んだのは小学生5年生位の頃。


それまでにあの日が再現されるかもしれないので、ずっと警戒はしていたのだが、杞憂に終わった。


だが、そろそろ事故の日が近付いてきている。


油断は出来ない。


今度こそはちゃんと守るんだ。


俺がこの手で………


「何悩ましい顔してるのかしら、ゼロくん?もしかして、変な事を考えてた?」

「変て、お前………」

「あれ、図星じゃなかった?」

「的外れにも程がある位には大間違いだよ。此方は真剣に悩んでんだ。」

「………ああ、そうよね。もう直ぐでしたものね。」

「………そうだな。」


涼菓ちゃんが引っ越しする日は後3日。


俺はその一日前に告白した。


………そして、彼女が目の前で死んだ。


「俺、涼菓に告白するんだ。」

「………。」


やっぱり、気が付くかぁ………


こういう時の察しの良さは、本当に凄いんだよなぁコイツ………


「離れ離れになるし、辛いと思うけど、本当にするのかしら?」

「当たり前だ。」

「そう、なら頑張ってくださいね。私、応援してますわ。」

「そうか、いつもありがとうな影織。」

「素直にどうも。いつも、そうしていた方が良いですわよ。男のツンデレの需要は皆無ですから。」

「お前、よくそんな言葉知ってるな………」


お前、一応小学生なんだぞ?


「お互い様ですわ。」

「………それもそうだな。」


☆☆☆


「はぁ、緊張する………」


当日になり、俺はかなり緊張していた。


あの時は勢いで告白した。


アドレナリンが滅茶苦茶出ていたとでも言うのだろうか?


緊張感など全く覚えず、ちゃんと伝えられたのだ。


だが、今回は素面だ。


マジで恥ずかしい………


普段、可愛がるのとは訳が違う。


「よし、覚悟を決めろ!男を見せろ!」


足を踏み出し、彼女の元へと向かう。


「よぉ、待たせたな涼菓ちゃん。」

「うん、待ってたわよゼロくん。」


真っ直ぐに俺を見つめてくる涼菓。


ああ、可愛い。


多分、あの事件がなければ想像以上に綺麗になってたのだろう。


前はその姿を見れなかったけど、今度こそは見てみたい。


だからこそ、今回も………


「涼菓ちゃん、言いたい事がある。」

「………うん、何?」

「俺はお前が好きだ。」


色々と誤魔化すのは好きじゃない。


伝えたい事をちゃんと、直球に伝えよう。


多分、それが1番だから。


「うん、私も大好き!」

「そうか、ありがとう………」

「でも!だからこそ、離れ離れになりたくないの!ずっと一緒が良い!ゼロくんとだけじゃない影ちゃんとも一緒が良いの!引っ越しなんてしたくない!」


と、彼女が心の内を吐露する。


彼女はまだ小学生だ。


そう簡単に現実との折り合いなんて、出来る訳がないのだ。


大人でさえ難しいというのに………


それに、コレは俺にはどうする事も出来ない問題なのだ。


「ねぇ、ゼロくん。私を助けて?」


………ああ、そうだ。


………思い出した。


コレが………コレこそか引き金だった。


続く

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