第4話 決意

第4話


「ほら、砂のお城!どう凄いでしょう?」

「おお、凄いな涼菓ちゃん。」


砂遊びをしていた俺達。


涼菓は自前の砂遊びセットで、子供にしては上出来な城を作っていた。


ドヤ顔してる涼菓が可愛過ぎて、萌死にそうになりながら俺は撫でてあげる。


すると、涼菓は目を細めて気持ち良さそうにしながら………


「もっと!もっと撫でて!」

「おう、幾らでも撫でてやるよ!」

「仲間外れ!仲間外れは反対ですよ!」

「あっ、そうだな。一応撫でてやる。特別だからな。」

「むっー!」


と、撫でを二人に要求される。


影織は何故か怒った顔をしながら頭を突き付けてくるのだが。


まぁ、別に良い。


コイツ等はまだ子供なのだから。


でも、影織は大人になっても要求してきたからなぁ………


「可愛いなぁ………」

「可愛い?私、可愛い?」

「何だ聞こえてたのか。おう、世界一可愛いぞ。」

「やったぁ♪世界一♪ゼロくんの1番♪」


と、よく解らん勝利の舞いみたいな物を踊っている。


可愛い。うん、可愛い。


いや、マジで可愛いな………


尊さで人って死ねる説はもしかして正しいのかもしれないな。


いや、あの子達に会うまでは死ぬつもりは皆無なのだが。


それはそれとして、可愛い。


「また仲間外れ!私は?ねぇ、私はどうなのですか?」

「………一応可愛いぞ。世界で二番目だ。」

「くっ、負けました………」

「お前、そういう所は変わらんなぁ………」


無駄に負けず嫌い、それが影織なのだ。


何か性格は違う気がするけど、ここら辺だけは変わってないらしい。


「今度はおままごとやろう!私はゼロくんのお嫁さんで、影ちゃんが私達の仲を邪魔するお義母さん役ね!」

「嫌です!今度こそ、私がお嫁さん役をする番です!」


うん、そう言えば、昔はこんな事でよく喧嘩してた気がするなぁ………


仲が良いのは良い事だなぁ………


☆☆☆


「じゃあね、ゼロくん!」

「また明日ですね!」

「おう、またな!」


と、滅茶苦茶遊びまくった俺達は日が暮れたのを合図に、それぞれの家路に着いた。


本当に疲れた。


でも、懐かしく………良い疲れだ。


「もう二度と味わえないと思ってた物を味わうと、泣きそうになるなぁ………」


そして、それと同時にあの結末を思い出す。


彼女………涼菓が死んだのは、この公園の近くだ。


「確か、此処だったなぁ………」


道路を見渡しながら、そっと呟く。


彼女は此処で………


『ゼロくん、何処?助けて、助けてよゼロくん………』


あの時の情景が頭の中に浮かんでくる。


「………馬鹿だな、俺。」


くだらない事で何を悩んでいたんだ、俺は?


歴史がなんだ、負債がなんだ。


そんなの絶対に変えてやる、要らない物だと全て押し付けてやる。


「俺は此処に居る、今度こそ助けてやるからな涼菓ちゃん。」


もう迷わない。


俺は絶対に涼菓ちゃんを助けるんだ!


「よし、やれる事は全部やろう!」


もし、これから辿る歴史が覆せない物だとしても。


結末が決まっている物だとしても!


「俺が絶対に変えてやる!結末なんざ塗り替えてやる!!」


だから、安心しててくれよ涼菓ちゃん。


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る