一人目 幼馴染の音無涼菓

第2話 気が付けば過去に

第2話


「知ってる天井だ…」


目を覚ますと、何度も見てきた天井が広がっていた。


あれ?


俺は刺されたよな?


そして、轢かれたよな?


確か、俺が幼稚園児位の時に死んだ従兄の人識兄ちゃんみたいに………


万が一生きてたとしても、知らない天井の筈だよな?


………あれ?


「あれ、起きてたの?お昼寝はもう良いのかな?」


この声、お母さんか?


でも、何か若々しいな………


「マジか………」


と、母さんに聞こえない様に小さく呟く。


母さんの声が聞こえる方を向くと、其処には母さんが居た。


何を当たり前の事だろうと思うなよ?


母さんは母さんなのだが、


ちょうど、俺の従兄の人識兄ちゃんが死んだ頃位の姿だ。


まさか、若返りの滝に手を出したのか!?


それとも、ドラゴンボ○ル!?


いや、そんな非現実的な事が起きる筈がないだろ!


………あれ?


そういや、今まで俺が喋ってる時の声………


「か、母さん………」

「あら、何かしら?」

「ううん、呼んでみただけ………」

「そうなの?何処でそんな高等テクを学んできたのかしら、このおませさん♪」


恐る恐る母さんを呼んでみる。


母さんのリアクションは死ぬ程にどうでも良いが、


高い、滅茶苦茶高い声だ。


ソプラノ?ソプラノなのか?って位にだ。


俺の声は低い筈だ。


音域で言うなら、テナーよりのバスだ。


嫌な予感がする………


………いや、予感というより確信だ。


少し迷いながらも自分の手を見て………


「小さいな、うん。」


子供みたいに小さかった。


足の方も見てみたが、小さかった。


ああ、やっぱりコレは………


「はぁ、覚悟を決めて鏡を見るか………」


普段とは勝手の違う足取りで風呂場へと向かう。


そして、其処に在る大鏡を見て………


「やっぱりかぁ………」


俺の姿は完全に俺だった。


後少しで小学生になるという時の俺の姿だったのだ。


「これ、逆行という奴だよなぁ………」


なろうとかカクヨムとかで、よくある奴だった筈だ。


まさか、自分が同じ目に合うとはなぁ………


まぁ、少しリアリティのある走馬灯なのかもしれないが………


☆☆☆


あの後、カレンダーを見たり、テレビを見たりして、はっきりと逆行している事を確信した。


間違いなく、俺が小学校に入学する少し前に戻ってきている。


理由こそ全く解らないのだが………


「どうした物かなぁ………」


勿論、後悔は沢山ある。


主に好きになった彼女達の事だ。


だが、歴史を変える気は余り起きなかった。


どれだけ足掻いても無理かもしれないし、救えたとしても、誰かがその負債を背負うかもしれない。


なら、俺は動くべきではないだろう。


どれだけ、俺が彼女達の事を想っていたとしてもだ。


「逆行してもままならない物だな、人生ってのは………」


これから、本当にどうしよう?


続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る