授業(2)

一時間目が終わり、次は移動教室の授業だ。

それぞれ、準備をし、教室に向かっていく。


「織原さん、次、移動教室だから準備しなきゃ」


声をかけたのは、隣の席の坂守だった。


「そうですね、次の授業はなんですか?」

「えーっと、次は美術だね」

「そうですか、もしよければ案内してもらえますか」

「当たり前じゃん!じゃあ、早速行こうか」


美術室は、教室を出て少し廊下を進んだ所にある。

二人は、美術室に着くと自分の席に着いた。


「今日は、どの様な事をするんですか」

「そうだなぁ~、前回フルーツの絵を描いたから、今日も同じ事をするんじゃないかな」


クラスの人が全員席に着くとチャイムが鳴り、授業が始まった。

美術の先生は60代のおばあちゃん先生だ。


「はい、今日の授業は、学校内の色々な所を班になってスケッチして来て下さい」


先生がそう言うと、クラスのみんなは、直ぐに織原さんの所に来た。


「私と組んでくれるかな」

「いいや、俺と組んでくれ!」


とこんな感じで、人が織原さんの所に群がるが。


「すいません、もう先客がいるので」


その一言で、集まった人の顔が崩れ、ぞろぞろと他の人同士で

班を組んでいった。


「ねぇ、織原さんは誰と組むんだい?」


隣で見ていた、坂守が話かける。


「えーっと、君と組みたいのだけれども、いいかな」


少し恥ずかしながら言っていた。


「別にいいけど、他の人もいるけどいい?」

「全然、大丈夫です」

「分かった、じゃあ移動しよっか」


坂守は絵を描く準備をして席を立ち、美術室を出て、校舎を出て、正門に向かった


「おーい!こっちだよ~」

「わり~、少し遅れた」


織原さんは、無言で坂守の後ろをついていった。


「あれー!織原さんがいるじゃん、もしかして、一緒の班なの⁈」

「えぇ、お願いします」

「やったー!」

「こちらこそよろしく」


ちなみに、そこにいたのは、元気一杯の女の子、三条 美由紀、少し内気な性格の中野 誉、そして真面目な西園寺 優太だった。

何とも異色のメンバー。


「さぁーて、今日は、校舎全体をかくか」


坂守が提案をした。


「いいね!」

「分かりましたぁ」

「そうしようか」


三人はすぐにOKサインを出したが。

織原さんは、少し頭に?を浮かべた顔をしながら。


「残された授業時間で描くには、少し時間が足りなく無いですか」


確かに後30分ぐらいしかない時間で校舎を描くのは少し無理があるのではないのかと思った。


「よくぞ!聞いてくれたー、この学校は授業の目的が終わるまで、次の授業に行けないのだよ!」

「あぁ、変な校長先生のおかげで、気楽にできる」


織原さんの質問に、三条と西園寺が答えた。

織原さんは少し驚いていたが、ペンとキャンパスを持って正門付近のベンチに座った。


「さぁ、絵を描きましょうか」


織原さんは、集中して描き始めた、俺たちも少し散らばり様々な角度から校舎を描き始めた。


1時間後


「かけた~、皆はどう、かけた?」

「あとすこしですぅ」

「こっちもだ」

「右に同じく」


三条の問いかけに三人はすぐに答えたが、織原さんはキャンパスに集中して答えていなかった。

数分後、描き終わった四人は未だに集中している、織原さんの元にゆっくり近づきこっそり絵をみた。


(多分完璧にかけてるんだろうな)


四人共期待を胸に覗いた。


『え・・・・・!?』


四人の声がそろった、多分考えていることは、全員同じだろう。

そう、織原さんの絵を見て皆驚いたのであった。


「織原さん、それは、何を描いているんだ・・・・」


西園寺が織原さんに質問した。


「え、これは、校舎を描きましたが」


当然のことのように、織原さんは言った。

その言葉を聞いて、ついに中野 誉が吹いてしまった。

そう、織原さんの絵は子供が描いたような絵だった。


「どうでしょうか、結構うまく描けたと思うのですが」


織原さんは少し照れたように言ったが、四人は少しポカーンとした顔をしていた。


『どう見ても、校舎にはみえない!』


心の中でツッコミを入れていた。


「さ、さぁ、皆描き終わったところだし、戻ろうか」


場の雰囲気を変える為に、西園寺が戻る事を提案した。

美術室に戻る間、誰も織原さんに自分の描いた絵を見せる人はいなかった。


美術室に着き、先生にスケッチした絵を渡していく、先生は

 

「皆さんよく描けてますね」


生徒が渡しに来た絵を見て褒めていた。

遂に、織原さんが絵を渡しに行った。

先生の前にゆっくり歩いていき、絵を差し出す。


「よろしくお願いします」

「初めての学校での授業ですが、スケッチは上手に描けましたか?」

「はい、自分なりには、上手に描けたと思います」


先生は織原さんから渡されたスケッチを見た、その後の先生の反応は言うまでもないだろう。

先生の反応を見て俺達は、笑っていた。

織原さんの絵を見た人が一緒に描いた人と先生だけで良かったと思う出来事であった!!


一生懸命に描いた絵が変んな織原さん

【 カワイイ❤  その頑張りを無駄にしたくない‼ 】


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