第6話 緊急招集


 ラウラスギルド、会議室。

 そこでは今回の件に対して緊急会議が開かれていた。


「全員集まったか?」


 ギルド運営の最高責任者代理の町役員。


「いや、まだ1人来ていません」


 全業務のマネジメントを担当する管理部長。


「ふむ」


 唯一残ったベテラン冒険者。


「……」


 町長。


 その他にも様々な、いわゆるギルドのトップ達が集まる中で、


「すみません、遅れました」


 3年目、シオン=エンフィールもその中に呼ばれていた。


「いや、大丈夫だ。突然呼び出して申し訳ない……それより、なんだ君たちは?」


 そしてその後ろには、


「どうも、勇者だ」

「女神です!」


 厳正な雰囲気だけにやけに目立って元気な2人が現れた。


「え、誰?」


「……ごほんっ、すみません。どうしても私についてくるもので……。それに、実はこの2人には色々と貸しがありまして……」

「まあいい、だが決して外に漏らすんじゃないぞ」

「本っ当に申し訳ないです」


 そんなこんなで、会議が執り行われる事となった。


***


「それで、今回の経緯は」


 まず初めに、役員のお偉いさんが口を開いた。


「我がギルドの在籍冒険者のうち主力6人全員が移籍、ギルド長も解任、すぐさま街では抗議運動が多発、今後取引先の契約続行も困難となります」


 それに対し、管理部長が粛々と事実を述べていく。


 何故呼ばれたかも分からないような下っ端の私には、もちろん発言権などは存在しない。

 むしろここで無礼な事があろうものなら、今後の立場が危ぶまれることになりかねない。


「……打開策は」


「来期までに新たな主力冒険者とそれらをまとめるギルド長を補充する……正直現実的ではありません」


(ちなみに来期はいつ頃なんだ……?)


 リューバが耳元に囁いてきた。


(うーむ、だいたい1ヶ月半後くらいだ)


「そこ、私語は慎むように」


「すみません……」


 管理部長からひと通り話を聞いた役員さんは、腕を組んで悶々としている。


「すみません、主力が抜けたなら別の人を主力にすればいいんじゃないですか? それに、ギルド長だって次に偉い人を指名すればいいんじゃ……?」


 そんな状況に割って入ったのはウールだ。挙手もせず、一人勝手に大きな声で管理部長に問い立てた。


 私は頭を抱え込む。もう肩身が狭いどころの話ではない。だが本人は無自覚なようでキョトンとしている。


「あのなぁ、抜けた分の戦力をカバー出来るならとっくに出来てるよ……主力級の冒険者を一人見つけるだけでも、ゴミの山から宝石を見つけるくらいの確率の低さなのに、ましてやギルド長なんか金脈を1発で探し当てるような確率だ」


 そんな管理部長のわかりやすい説明に、ウールは納得したようでようやく引き下がってくれた。


 そしてしばらく沈黙が訪れる。


 しばらく経ったあと、次に口を割ったのは役員さんであった。


「現場の声としての意見は? シオン=エンフィール、君はどうするべきだと思うんだい?」


 まさかの名指しに少し狼狽えたが、すぐに気を取り直した。多分、このために私は呼ばれたのであろう。


「私は……とりあえず目先の問題である騒動の沈静化が最優先かと。いってもまだ来期まで1ヶ月半あるわけですし、主力問題はその間になんとか……」


 自分では比較的まともな意見を言った……はずだった。


 前を見るとみんな顔は下げたままである。


「……と言っているが?」


 聞こえるのは役員さんの低い声。

 その行く先は管理部長である。


「そうですね……


 さっと血の気が引いたような気がした。 


 だが、それだけでは終わらない。


「それなら……畳むか」


「そうですね、それもひとつの選択肢に大いに入ると思われます。これ以上の運営は困難です」


 明らかに出来すぎた展開、そして放たれたのは、まさかの一言だった。


「どういうことですか?」


 思わず割って入ってしまった。挙手もせず、私は一人勝手に大きな声で管理部長に問い立てた。


「皆の責任を背負う立場で、何故そんな無責任なことが軽々と言えるのですか」


 皆の上に立つ存在である以上、その意見は下の立場も含めた人々の総意となる。もちろんその一人一人に生活があり、家族がいる。

 だから、いくら難しいとはいえ、皆のために最後まで粘るのが普通なのである。

 

 だが、目の前の管理部長はそんな私を足蹴にするように、


「君、上司に対する口の利き方は慎むべきでは?」


 その言葉に、妙に引っ掛かりを覚える。


「それって、まさか……」

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