第3話 急展開


 事態は、またもや急展開を迎えた。


 あの後、私は一旦自宅に帰って仮眠を取った。先も見えない展開に耐えきれず、夢の世界に逃避するしかなかったのだ。


 そして、私はあまりの騒がしさに目を覚ました。どうやら外からのようだ。


 ドアを開けて外に出る。


 すると、目の前に広がっていたのは、数え切れない人数の人だかりだった。

 それも、単なる人だかりではない。野次馬と思われる人の数を除くと、ほぼ全員が暴徒と化していたのである。


「まさか……」


 飛び交う罵声、暴言。


 しばらく立ち尽くしていたが、とにかくこのままでは遅刻してしまうので人混みを掻き分けながら私は職場へ急いだ。職場に向かうほど人混みの密度が増していっている気もしたが、そんなこと気にする余裕はなかった。



 ギルドに着く。だが、たくさんの人で入口が塞がれていた。


「ふざけるな!」

「一体どうなってるんだ!」

「説明しろ!」


 そんな声が延々と聞こえる中、私はとりあえず誰も人混みから離れた裏口からギルドに入ることができた。



 だが、事務室に入ると様子は一変した。


 そこにいるのは、まるで何も起こっていないかのようにいつも通り仕事をしている人たち。


「事態を詳しく教えてくれないか?」

「いやぁ……なんか、色々あったみたいです……」


 聞いた人全員、返ってくる回答もあやふやなので事態をあまり把握していないらしい。



 そして誰も動く様子はない。


 ということは、一時的な何かで事態はじきに収束するということだろうか。

 そう思った私は、皆と同じく仕事を再開した。


 自室に着き、少し溜まった書類に目を通し始める。


 だが、


「……」


『……どうなってるんだ!』


「んー……」


『……俺達はどうなるんだ!』

 

「うーん……」


 だが、怒号は絶えずこちらまでしっかりと聞こえてくる。


『お前らのせいで……』


「んんん……」


『……責任取れ!』


「はぁ……ダメだこりゃ」


 当たり前だが、そんなことはなかった。聞こえてくる声は小さくなるどころか、どんどん大きくなっていく。


  私は立ち上がり、声の聞こえる受付の方へ急いだ。



 その途中、事務室を覗いてみると、未だに誰ひとり事態の収集に急ごうとする人はいなかった。

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