第3話

 ディスクの売り上げよりも、ライブツアー失敗の方が痛かった。

 色々準備してきたのに、アイツとのユニットで初めて、大幅な赤字を出してしまった。

 悔しかった。

 俺は歌うことしかできない。アイツに曲作りは任せっきりだ。 

 それから1年間模索の日々が続いた。

 ディスクは出さない。ライブもしない1年だった。

 そんな時、ターニングポイントとも言えるアニメの挿入歌の依頼が入る。

 アニメの曲は初めてだった。

 アニメの雰囲気で行くのか、自の歌で歌うか悩んだ。

 悩んだ末、後者で歌った。

 この曲が久しぶりに、10万枚を超えるヒットになった。

 うまく行った。

 久しぶりに喜びを噛み締めた。

 そうして今度は、アニメのオープニングの依頼が来る。

 こちらも、10万枚を超えるヒットを飛ばす。

 再び波が来ている。そう思った。

 そして、2年ぶりのライブツアーを敢行する。

 このライブツアーの初日、観客を見るまで不安だった。だか、満員御礼の客席を見たら、涙してしまった。

 

 ライブのラストソングが終わり、俺が余韻を噛み締めていると、アイツが指を目の前に差し出して来た。

 最初は何でか分からなかったが、少しの後、理解すると、俺はアイツの指に自分の指を絡ませるのだった。


終わり クロス完

 

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クロスⅢ 浅貴るお @ruo

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