2-10 ティエスちゃんはピクニックなう①
「うーん最高の天気だ、まるでピクニック日和だなァ!」
『サー・イエッサー!』
見渡すばかりの晴天は凪いだ湖面のように透き通っていて、まるで
ちなみに今回の歩兵装備の内訳は
鎧兜のデザインはつや消しロービジ塗装されたサイバー西洋甲冑って感じでベリークールにかっちょいいし、杖に至っては見てくれはほとんど自動小銃だ。多分これも俺より前に来た転生者の仕業だと思う。いい仕事してますねぇ!
もっとも銃の機構とは全く違うけどな。あくまで見てくれがそれっぽいってだけ。この世界、火砲の類は全く発達していないんだわ。魔法がちょっと万能すぎるんだよね。こいつは電源呪符から供給した圧縮エーテルを内部の回路(魔法陣みたいなものを想像してほしい)で制御して特定の現象を発現させる仕組み。これを規格化してマスプロダクトすることで万人を魔法攻撃が撃てる戦力にできるワケやね。やってることは自動車の件とほとんど一緒だ。こうやってこの世界は発展してきたんですねぇ。工業化万歳、魔法科学万歳!
ちなみに今回の装備はセットでだいたい総重量40㎏ほどになります。重たいね。
なお、エルヴィン少年にはさすがに負荷がきつすぎるので、ヘルメットとバックパック、ベルトキットだけ装備させている。お、なんとも情けない目でこっちを見てやがる。これ以上の手加減はしねーぞ頑張れ頑張れやればできる。俺だってこのマイナス10度のなかシジミがトゥルルって頑張ってんだよ。いやちょっとネタが古いか。
まぁエルヴィン少年に関しては様子を見て負荷を増やしたり減らしたりしていこう。忘れがちだけどこいつまだ十歳なんだよな。軍に入るのに下限の年齢制限はないが、それでも14、15歳からってのが普通だ。第2次性徴前だもんな。ちょっと甘めにしてやろう。というワケで俺はエルヴィンの残りの荷物を余計に担ぐ。大体20kgくらいの重量追加だな。リハビリにゃちょうどいい負荷だぜ。
「今回の行程を説明する。副官」
「ハッ! 総員、傾注!」
敬礼して数歩踏み出た副官が回れ右して、腰のベルトキットから地図を取り出した。手帳型のもので、エライゾ領内をかなり詳しくマッピングしてある。もちろん軍事機密なので士官階級からしか携帯を許可されないし、紛失したり横流ししたりなんてしたら最悪軍警察に引っ立てられてコトによっちゃひどい目に合う。こわいね。
「第一小隊は10:00にここ、第2演習場を出発し、第5ゲートから基地外に出て、街道を東進。暫時休憩をとりつつ、御山の麓のキャンプを目指す。到着は18:00。一泊し、翌06:00に出発。往路と同様のルートを通り、14:00に基地に帰還する。総行軍距離は100キロメートル。以上だ。質問はあるか」
ちなみに時刻とか距離とかは随時日本の概念に変換してるのであしからず。まあこの世界も時刻については60進法と12進法を採用してる。もっともこの世界の1秒が前世の1秒と同じ長さなのかまではわからんがね。誰に弁明してんだ俺は。
質問者はいなかったが、部隊全員から「なんか今日、ぬるくね?」みたいなダレた雰囲気を感じる。まぁ実際ヌルい。普段なら今日中に往復させるところだしな。
「これにて説明を終了する。……中隊長」
「ご苦労。お前らも察してると思うが、今日は本当にただただ楽しいピクニックだ。新人歓迎会の続きみてーなもんだな。力を抜くのは構わんが、手は抜かないように。センパイづらをしたかったら範を見せろ。以上だ」
「敬礼!」
副官の号令で全員が一糸乱れぬ敬礼をキメた。エルヴィン少年だけ一瞬遅れたな。仕込みがいがある。俺は鷹揚に返礼してから、声を張り上げた。
「第一小隊、出発!」
『サー・イエッサー!!』
さぁ、楽しい遠足の始まりだ。
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