2.ミトスの真の力。
「ボクを、殺すだって……!?」
「あぁ、そうだ。言っておくが、私は本気だぞ?」
アクシスさんは腰元の剣を引き抜き、真っすぐにこちらを見据えて言う。
まるで想定していなかった言葉にボクは声を震えさせるが、それはどうやらリキッドも同じだったらしい。彼は一歩前に出て、こう訴えた。
「待ってくださいリーダー! なにかの冗談でしょう!?」
しかしアクシスさんは、いたって平静に応えるのだ。
「静かにしろ、リキッド。お前は私が嘘を嫌うこと、知っているはずだぞ」
「ですが……!」
淡々とした口調。
そこからは、何も読み取ることができない。
ただ分かったのは、彼女が本気でボクの命を奪おうとしている、ということ。その事実に直面して、頬に冷たい汗が伝っていった。
いまから逃げ出そうにも、きっと遅い。
アクシスさんの剣技はリキッドのそれよりも圧倒的に速く、強いのだから。
「下がっていろ、リキッド。用があるのは、ミトスだけだ」
そして、リキッドもリーダーの言葉の前には身動きが取れない。
だとすればもう、ボクに残された選択は一つしかなくて――。
「どうやら、覚悟は決まったらしいな」
「………………っ!」
立ち向かうしかない。
願わくは、昨日見た『あの光景が正しい』ことを祈るだけ。
ボクは身構えて、震える脚に力を込めて、ただただ真っすぐに強大な力を持つ相手を見つめた。すると次の瞬間、アクシスさんは一足飛びに間合いを詰めてきて――。
「ぐ、うぅ……!?」
ボクの胴に目がけて、思い切り剣を薙いだ。
とっさに回避動作をするが、完全に躱すことはできない。それでもいくらかの軽減になったのか、どうにか吹き飛ばされるだけにとどまった。
だけども、それが限界。
強か打ち付けた箇所は酷く痛んでいる。
そして何よりも、一撃を受けた位置の骨にはヒビが入っているだろう。
「かは……!」
瞬間的に呼吸ができず。
ボクは、ただただその場にうずくまった。
するとそんなこちらに、アクシスさんは剣を収めながら言う。
「やはり、キミには『視えて』いたのだな」――と。
額から脂汗をかきながら、ボクはその言葉の真意を読み取ろうとする。
そして彼女の意図を分かりかねていたのは、リキッドも同じだ。彼はアクシスさんから敵意が消えたのを確認したらしく、こう口を挟むのだった。
「リーダー……いったい、どういうことですか?」
その問いかけに応えるより先。
彼女は床に倒れたボクのもとへと歩み寄り、手を差し出してきた。そして、
「先ほどの非礼、深く詫びよう。私は生涯で初めて嘘をついた」
こちらを助け起こし、そう口にする。
痛みを覚えつつも呆気に取られていると、彼女はしばし考え込む。その後、
「え、あの……!?」
「なるほど。鉄の板を仕込むことで、私の一撃を軽減させたか」
ボクの胴に触れ、そこにある鉄板を確かめるのだった。
そして、アクシスさんは改めてボクを見る。
その赤い瞳に映ったのは、困惑の色を隠せないボクの表情。
そこへ彼女は、追い打ちをかけるように言うのだ。
「キミの持つ力は【鑑定】ではない」
今までの常識を否定して。
「キミの真の力の名は【未来視】だろう」――と。
ボクは彼女のそれに、しばし眉をひそめるしかできなかった……。
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