第2話 なぜこうなった?

 ここからマーヤとラーファの逃避行の話が始まります。

 話は百年後ヴァン国の建国まで続く予定です。

――――――――――――――――――――――――

 目を覚ますと赤ん坊でした、ええこれまでの経緯は知っています。

 でも赤ん坊って何にも出来ないのですよ、寝返りも腕を大きく動かす事さえできなくて、指をニギニギするくらいです。


 ですから、泣いてやりましたわ、「ホギャ、ホギャ、ビエエッ」とね。


 ラーファが目を覚ましたようね。

 『お腹が空いたのよお乳を頂戴』とマーヤ。


 ラーファが目を覚ますとマーヤが泣いていた。

 私(マーヤ)はラーファの心と繋がっているようです、ラーファの考えている事が伝わってきます。


 ラーファがベッドから起きて、腕を伸ばして、ベビーベッドからマーヤを抱き上げる。

 「ハイハイ、いい子ね、今オッパイ上げますよ」

 とマーヤをあやしながら、右の胸に持って行く。


 『ラーファ、ママの頭の中にも私がいるわ』とマーヤ。

 「ええ、そうみたいね」とラーファが当たり前でしょ、みたいに言う。

 『私がママで、ママは私?』とマーヤ。

 「どうでしょう?そうかもしれないし、違うかもしれないね」

 あいまいな事をラーファが言う。


 『どっちなのよ』とマーヤ。

 「二人が繋がっているのは間違いないわ、でもマーヤはマーヤでラーファはラーファよ」


 私(マーヤ)は乳房が口に触れると直ぐお乳を飲みだした。

 全身を使って力いっぱいお乳を飲む、吸う度に少しづつ母乳が出てくる。

 『お腹が減ってるのよ、もっと頂戴!』とマーヤ。


 空腹を満たそうとする力は、お乳を飲まずにいられない強制力となって私(マーヤ)に全身の力を全てお乳を飲むことに集中させる。


 ラーファもお乳を吸われるたびに、マーヤを愛しいと言う思いが強くなるようだ。

 「貴方を愛しているわマーヤ」

 ラーファがマーヤに言う、母と子と命を継ぐ行いが心も強く繋いでいく。


 やがて私(マーヤ)は疲れて寝むたくなった。

 『おやすみー』とマーヤ。

 ラーファも始めて出た母乳なので初乳に感動していた。

 『おやすみ、マーヤ』とラーファ。


 抱っこして、えーとっ、ゲップさせないで寝かせたら吐いちゃうのよね、どうやってゲップさせるのだろう?

 『縦抱きにして、肩ぐらいに顔を出す様に抱くの、その後背中をポンポンって軽くたたいてあげればいいのよ』とマーヤ。

 『ありがとう』とラーファ。

 『どこの世界に赤ん坊からゲップの仕方を教わる母親がいるのよ』とマーヤ。


 何回か挑戦して、ゲップを出させると、ラーファは満足したようだ。

 ラーファはマーヤをベビーベッドの上に敷いたタオルの上に起こさないように慎重に寝かすと、周りを見てみる。

 『マーヤが寝て居てもラーファの中で起きていられるよ』とマーヤ。

 『不思議ね、マーヤは寝てるのに、頭の中でお話が出来るのね』とラーファ。


 私(ラーファ)はマーヤを起こさないように静かに離れると、寝室から神域を見回す。

 ここは彼の作った、神域、今はマーヤの神域になっている。


 中は壁で区切られている幾つかの部屋が在り、白く柔らかい光で満ちている。

 見えないのに不思議にも分かる大きさは20ヒロス(30㎡)、高さ4ヒロ(6m)ほど。


 中に在る幾つかの部屋を見てみよう。

 入り口には玄関の部屋、そこを出て正面に居間として使えそうな部屋。

 左に更に部屋が在り、玄関と同じ側の部屋にはお風呂とトイレがある。

 居間の続きの部屋は今居る寝室になっている。

 何故寝室と分かるのかは、ベッドとマーヤが寝ているベビーベッドが在るから。


 寝室には鏡台と衣装棚、他にも格納できる棚やタンスがある。

 鏡台には、守り刀と装飾品、服や下着は衣装棚、シーツや布団やまくらは棚へ入れられてる。

 お風呂とトイレにはタオルや雑貨が入った収納がある。

 お風呂とトイレは直ぐに使えそう。


 寝室から居間へ移動すると、奥が台所に成っている。

 居間の奥には台所があって食事が作れる様になっている。

 他にはテーブルと椅子が2つだけ、居間の玄関側の壁には収納がある。

 中を開けるとマーヤとラーファの外着やマントがあった。


 台所には何も食べのもが無かった、唯一在るのはダキエから持ってきた兵糧(レーション)の箱と闇の森ダンジョンでドロップしたハチミツだけ。


 闇の森ダンジョンで迷った時これらとドロップした肉だけが食べ物だった。

 出来るだけ早めに食べ物を買おう。


 居間を出て玄関の間へ向かう、其処には1枚の扉がある。

 その扉が出入口になる、そしてこの扉には彼の力によって結界が作られていて私達に害を与えそうな人や物を感知して警告してくれる。

 此処には靴箱があって、ダキエを出る前から履いていた革靴が置いてある。

 その靴を履くと、玄関のドアを開いて外へ出る。


 ドアを開けると、其処はあの産屋となった洞窟で、今は日が射していて明るく中がみえる。

 洞窟の入り口にある魔道具はまだ魔石に魔力が残っていて結界を張り続けている。


 思い切って洞窟へ出てみる、堅い洞窟の砂利の感触が昨日の記憶を呼び起こす。


 昨日大きなお腹を抱え、やっとのことでこの洞窟迄逃げてきた。

 しばらく前から産気づいていたので、出産は近いと思っていた。

 ここで産むしかないと決断し、用意をした。

 と言ってもマントを引いて守り刀を用意するぐらいしかできなかった。


 体力を付ける為、兵糧(レーション)の箱入り緊急食糧を食べようと箱を開けた時、破水した。

 急いで、下半身のズボンと下着を脱いで、出産に備え、上着もたくし上げる。

 それからしばらくして出産が始まり、出産したのまでは覚えている、そこで記憶は途切れている。


 恐らくその時死んだのだろう、次に記憶が始まるのは彼の御霊分(みたまわけ)でこの体に入った時だ。

 『ラーファはそこから記憶が始まるのね』とマーヤ。

 『ええそうよ、死ぬ前の記憶も少しは残っているけど多くは無いわ』とラーファ。


 覚えているのは、名前はイスラーファ・イスミナ・アリシエン・ジュヲウ・エルルゥフ・ダキエ。

 結婚して6千年ぐらいであなたは初めての子よ、今年は聖樹年53、142年でマーヤ生が生まれた年よ。

 現在35、601歳ぐらいが覚えているラーファの事ね。


 夫の名前はサイ何とか?

 思い出せないけど、恐らく聖樹が失われた時共に死にました。


 『あ、私が起きたよ、泣きたくなった、お腹空いたよ、おしっこ出たよ』とマーヤ。


 マーヤが起きたようです、神域へ戻ります。

 「マーヤ、ママはお外にいますよ、直ぐに戻りますね」

 『聞こえてるよ、でも泣く!』とマーヤ。

――――――――――――――――――――――――

 ビチェンパスト国の途中までは、ラーファ主体で話は進みます。

 勿論主人公はマーヤですからマーヤの話も沢山出てきます。

 しかし、数年の間は赤ちゃんなので念話で話すぐらいです。

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