いつか見えた終わりの空に

 私があの魔女と出会ってから数日。私は変わらぬ平穏を謳歌していた。彼女とも初めて夜を共にして、幸せの絶頂だったある日、次は化け物がやってきた。


 モンスターは例外なく醜悪な見た目で、知性など感じないしどれもがどこか狂った容姿をしていた。しかし、あの化け物は違った。


 あいつは人間によく似ていた。手足があって、人間によく似た顔を持って、親しげに笑いかけてきた。ともすればそれはイケメンに見えたし、その日はよく晴れた日だったから、よくいる頭のおかしい貴族か何かかと勘違いしてしまった。


 その化け物は私の目の前に立って、恭しく頭を下げた。そして。


 私の腕をもぎ取って、目の前で食べた。


 あまりにも自然に。それが当たり前かのように。それが、化け物を化け物たらしめん所以とすぐにわかった。


 もちろん人間は腕を無くせば生えてなど来ない。私はパニックのままにあいつを切り刻んだ。


 まぁ、あの魔女の仲間なのだから当たり前のように蘇ったが。


 そして化け物は、とても優しい笑顔で、


「ご馳走様でした。」


 と、私に礼をし、続けて語った。


「私たちは忌々しいあの空を壊したいんだ。そのために、力を蓄えないといけない。あの空の向こうには、僕たちを生み出して、そのまま捨てたどうしようもないろくでなしがいる。いつかあいつを殺して、食べて、僕たちが誰よりも優れたものとしてみんなを導くんだ。」


 そこまで一息で言い切った化け物は、またねと一言残し、手を振りながら霧のように消えた。


 …街の外から、血塗れで片腕をなくしたまま帰ってきた私を、彼女と友達たちは心配してくれた。でも、真実を伝えることは出来なかった。


 私はその夜、医師のいる教会で1人、考え事をしながら眠った。あの、私がいたはずの空を眺めながら。

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