私の箱庭
鈴音
床の上
昔から、欲しいものはなんでも手に入った。ゲームも、おもちゃも、お菓子も。
魔女なんて言われたこともあって、虐められた時もあったけど、でも自由なことに変わり無かった。
でも、友達はいなかった。だから、私の望む世界を作って、友達を作ろうとした。
沢山の人間の魂を放り込んで、モンスターを作って。困ったところを助けて、みんなから褒められたかった。
でも、みんなは私のことを怖がった。気づけば、生き物はほとんど死んじゃっていた。
そのゲームに飽きてほっぽって、次の世界をまた作った。クローンを戦わせるゲームの世界とか、かっこいい魔法で殺し合う世界。でも、全部の世界で人間は生き延びることは無かった。
そんな時だった。捨てた世界を詰め込んだ暗い部屋から、声が聞こえた。
ついに友達が出来た!生き残りがいたんだ!
嬉しくて、急いで部屋に向かった。けど、作った世界が多すぎてどこから声が聞こえてるかわかんなかった。
とにかくひっくり返して、床の上は気持ちの悪い色になったけど、それでも諦めなかった。
そして、それは見つかった。何個目の世界かはわからないけど、その世界には間違いなく人間がいた。
でも、みんなギラギラとした目をして、武器を持って私の写真を何回も何回も切りつけていた。
私はまた、嫌われたことがわかった。けど、折角壊すくらいなら、やってみたいことがあった。
私はこの世界に行くことを願った。どうすればいいかわかんなかったけど、望めばそれは簡単に実現した。
そして、私は驚いた。やってきたこの世界で、私を知っている人間はいなかった。ただ、似ている他人だった。もう誰も、私の事なんか知らなかった。
それで、その世界を脱出して色々な世界を調べて見ることにした。
どうやら、どの世界も私が捨てた瞬間に新しい命が生まれて、独自の進化を遂げていたようで、特に最初に行った世界は共通の敵が生まれてとても立派に成長していたらしい。
だから、私は友達を作りに行こうと思った。次からは、自分は誰かを隠せば、みんな友達になってくれると思った。
姿と名前を変えて、その世界に合うように自分の設定を変えて。
それでやってきた世界は、とても快適だった。
沢山のモンスターが人間を押し潰そうとするけど、それを人間は気にもせず押し返し、モンスターの親玉である名前も正体もわからない化け物と、それと手を組んだ魔女と言われた人間を一切の肉片も残さず焼き殺してやろうとみんな楽しそうに笑っていた。
私も、剣を学んで、魔法を覚えた。難しくて、最初は笑われたけど、次第に慣れてきて、可愛い彼女と仲良い友達も出来て、私はとっても楽しかった。
そんな生活が何年も続いて、沢山のモンスターをクズ肉に変えていたその時だった。
(ようこそ、こっち側へ)
声が、聞こえた。正体は、すぐにわかった。あれは、魔女の声だった。
言っている意味がわからなかったけど、とりあえず無視した。それから数日後に、魔女は私の前に姿を表した。
タバコを燻らせながら、低く嗄れた声で、魔女は誘ってきた。私と一緒にモンスターを使って、人間を滅ぼさない?と。無視して斬り殺した。
でも、魔女は死ななかった。カシャン、と軽いガラスの割れる音とともに血を吹き出しながらも、愉しそうに笑って、私の手を握った。
その笑顔と、手が私によく似ていて、私はすぐにその手を振り払って、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も斬った。刺して、振り上げて、剣を叩きつけて。それで無理だとわかったから、魔法をぶつけた。焼いて、圧殺して、溺れさせて、空気を止めて、空から叩き落として。でも、魔女は死ぬ度にビクビクと身を捩りながら悦んでいた。
ついに私の体力が尽きた時に、魔女は帰っていった。結局何がしたかったのかわからない。けど、次は必ず殺そうと思った。
それが、魔女と化け物との長い因縁と戦いの始まりだった。
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