第13話
魔法。
異世界ファンタジーの代名詞と言っても過言では無いものだが、この世界の人間でない俺にとっては想像しにくい概念でもある。
いや、もしかしたらこの世界の人間でも想像しにくいものなのかもしれない。
そんな未知である魔法には強い興味がある。
恐らくあの御前試合でも魔法が使われていたのだろう。意味の分からない動きをしていたから。
そんな動きが自分も出来るようになるのかと思うとワクワクが止まらない。
「いいか?お前ら?魔力の使い方を教えてやる。」
そう言っているのは榊教官だ。そう言えばこの人には苗字があるからこの世界では上位の人物なのだろう。
いわゆる貴族的な感じだ。
「魔力を体中に巡らせるんだ。そうすれば、なんて言うか、体が軽くなる!こう、ホワホワっとした感じだ!」
………………はい?え?それだけ…………?もっと他にわかりやすい何かとかないの?
「早くやれ!」
ないらしい。この人は感覚派のようだ。まぁ俺もなんだけどね。実際、何となくでなんとかなるもんよ。
皆が見よう見まねで魔力をどうにかし始めている。俺も遅れないように魔力をどうにかする。
まずはイメージからだ。
……………て、待てよ?そもそも魔力ってどこから放出するのが正解なんだ?魔力って何から生まれているんだ?
やべぇ。そこら辺のイメージが出来ないとまるで出来る気がしない。
「何か、魔力の練り方を教えて貰えませんか?」
少しでも何かを得られないかと教官に聞く。
「ふむ。そんな物は何となくで出来るだろう。魔力を練った後は全身から放出するだけだ。」
そんなことを当たり前かのように話してくるので何も分からなさそうだった。
どうしよう………。マジで分かんない。あたふたしている内に誰かが話しかけて来る。
「久しぶりだな。」
この言葉だけで誰かが分かる。俺に「久しぶり」と言う関わりがあるのは遥斗だけだ。あの事があったので少し気まずい。
「うん。久しぶりだね。」
「あの時は悪かったな。」
「いや、全然大丈夫だよ。こちらこそごめんね。」
「はははっ!お前は優しいな!」
「そうかな?ありがとう。」
「これからは仲間としてよろしくな!」
「うん!よろしく!」
遥斗と仲直り?出来た。これも彼の性格のお陰なのだろう。あんまり物事を気にしないタイプのように思える。
「ところで、魔力の扱い方分かった?」
「いや、わかんねぇ。でも、あっちの俊介って奴はもう出来たらしい。」
「もう!?凄いな!!どうやったんだろう?」
「それがなぁ、俺も聞いてみたんだけどよ、なんかムスッとしてなんも答えてくれねぇんだよな。」
なるほど…………。あんまり人と関わらないタイプなのか?
「そっかぁ。それじゃ少し厳しいのかな?」
「だと思うぞ。なんて言うか、そもそも人と関わりたくないって思ってるような感じもするな。」
困ったな。唯一出来た人もあまり教えてくれなそうだとなると、本当に打つ手がない。教官も何言ってるかわかんないし。
「しょうがないな!お前ら!少し強引になるが俺がお前らの体内の魔力を動かしてやる!一度だけしかやらんからそれでも掴めよ!」
優しいな!?前までなら絶対にこんなことしてくれなかった。やっぱり人間扱いしてもらえると嬉しいなぁ。
これをやって貰えればなんとか魔力の扱い方が分かるかもしれない。この一回で絶対に掴む。
俺は最後にやってもらうことにした。少しでもこの一回を有意義にするために彼らを観察するためだ。
と思っていたが見ててもよく分からない。なんだか、ハッ!としたような顔をしていた。それだけは分かった。
それからすぐに自分の番が来た。さっきまで見ていたのでやり方は分かる。
まずは教官の手を握る。とは言ってもそれだけだけど。
俺が教官の手を握って直ぐに体の中から得体の知れないエネルギーが放出したのがわかった。
こう、なんて言うか、イメージはアイ〇ンマンみたいな?
ボワーって出てる感じ。
後は、体の中心に何か塊があるような、恐らくだけどそれが魔力に関するものであるような何かを感じた。
今の自分も間違いなくハッ!っていう顔をしている気がする。間違いない。
今ので何となく感覚が分かった。
てか、これをなんもなしに自分のセンスでやるとか俊介やばいな。とんでもねぇ。
この感覚を忘れない内にもう一度再現する。中心にある物を手や足へと送り放出する。
筋肉とかそういうのじゃない。
だけど、丹田?に力を込めるのも重要っぽい?どっちかというと精神力的なものかな。
上手く説明出来ない。さらに、とんでもない集中力を要求される。
最初はあんまりだったけど、段々と慣れて来ると、できなくなったらどうしよう、と言う不安は無くなる。
少しは感覚を掴んだと言えるのだろうか。
そうして今日の訓練は終わったけど肉体的な疲れより精神的な疲れが強い。
だけど、間違いなく魔力を放出している時は身体能力が劇的に上がっていたのを感じた。
あの時憧れた目標に少しでも近づけた気がして、人知れずテンションが上がった。
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