第6話

「これより第一試合を始めます!選手の方は中央で構えてください!」


二人の選手が中央に向かっていく。名前は…………確か、八雲 桜と橘 凛だったかな?


どちらもとんでもない美人だ。特に桜という人は好みにドンピシャである。


いよいよ、二人が舞台の中央で向かい合い、構える。


その気迫がこちらにまで伝わってきた。不自然に体が強ばる。


とてもここまで距離があるように思えない。そんな緊張感だ。


「では、ここでルールを確認します。先に相手の魔法障壁を破壊したものの勝利とします。


また、当主側は準決勝から技の使用を認められるため、この試合では技の使用を禁止とします。


不正が発覚した場合は即刻試合終了とし、今後一切試合に出場することは出来なくなります。よろしいですね?」


技?技とはなんなのだろうか?


これからそれが見れると思うとテンションが上がる。


しかし、制限されているという事は当主側に随分不利なルールのようだが、まぁありがちなルールのような気もするのか?


舞台では二人が同時に頷いていた。


「勝負、始め!」


開始の合図と共に凛が仕掛ける。やはり技が使える方がやりやすいのかな?


「大和流水刀術 一の技 環流・飛瀑」


上段から滝のような攻撃が桜さんに襲いかかっている。


そんな攻撃を刀を斜めにして逸らすことで受け流していた。


前世で聞いた事がある。それがどれだけ難しいことかを。とんでもない技術である。


そのまま桜さんが目にも止まらぬ速さの袈裟斬りで障壁を破ってしまった。


「そこまで!勝者、八雲 桜!」


えっ…………?あれ?なんか歴代最強同士の戦いとか言ってなかったっけ?秒で終わってるんですけど………?


もう少し、なんというか、こう、激闘みたいになるのかなって思ってたわ。


「勝負、始め!」


俺が驚いている間に次の試合が始まっていた。


えっと、橘 雷という人と八雲 美咲という人の試合みたいだ。


八雲は苗字が同じみたいだけど何か繋がりがあるのかな?


いや、あるのだろうな。


「大和流炎刀術 三の技 流星火・狂焔」


流星の尾のような炎の軌跡が見える。めっちゃかっこいい。厨二心をくすぐられる。


その攻撃を雷さんが真正面から受止めて、弾き飛ばしていた。


衝撃がここまで伝わってくる。


……………ヤバ。


それからすぐに追撃をかけて、やはり秒で倒してしまった。


「そこまで!勝者、橘 雷!」


やっぱり早くないすか?早すぎると思うんですけど?


もうちょっとこう、熱い戦いみたいなになると思ってたんだけどな。


「これより第三試合を始めます!選手の方は中央で構えてください!」


二人の選手が中央で向かい合っている。四条 楓と宝生 一華っていう人の試合だ。


「勝負、始め!」


先程と違ってどちらもすぐには仕掛けないみたいだ。これはこれで少し退屈ではある。


それから数分はそんな睨み合いが続いただろうか。二人が遂に距離を詰め始めた。


二人が距離を詰める度に緊張感が増していくのを感じる。


ここにいるだけなのに喉が渇く。凄い気迫だ。


随分近くで睨み合っていたような気がする。一華さんが攻勢に出たのだ。


「大和流風刀術 三の技 裂葉風・神風」


あまりに鋭い斬撃に見える。


恐らく、このタイミングを待っていたであろう、楓さんが紙一重で攻撃をいなしてカウンターをしていた。


その攻撃を一華さんがいなそうとしていたような動作が見えたが、叶わず障壁が破壊されてしまったようだ。


「そこまで!勝者、四条 楓!」


めちゃくちゃ凄いことは分かる。でも俺には何をしているのか全く分からないから少し退屈な気がしている。


周りでは観客が盛り上がっている。「やっぱり当主の人達の圧勝だな。」とか、「学院生も弱くはないんだけどなぁ。」とか、「予想通りだな。」といった言葉が聞こえてくる。


当主の人達どんだけやばいんだよ。


学院生の人達が弱く見えるけども。あの短時間の中に弱くないと判断できるものがあったらしい。


しかし、これで予想通りなのか。強いにも程があるでしょ。俺もそんな風に言われてみたい。かっこいい。


そんなことを考えていたら、なんと次の勝負が終わってしまっていた。


「そこまで!勝者、宝生 椿!」


誰だよ!ってツッコミたくなるがそれを抑える。


全く試合を観れなかった……!


………………やばくね?当主。

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