超未来日記
七月二五日(火) 晴れのちくもり
今日、ぼくはタカシという名の少年だった。夏休みだから朝からばんまで友達と遊んでいた。クーラーのきいた部屋でゲームをやった。とてもおもしろかった。しかし、明日からはじゅくの夏期こう習があるそうだ。そのため今日のように一日中遊ぶなんてことができないようだ。悲しいことだ。
七月二六日(水) 晴れ
今日、ぼくはニシタニという名の会社員だった。ヒラ社員なんだけれど社長の秘密をにぎっていた。どんな秘密なのかはここには書けないけど。とにかく、そのために社長はぼくのごきげんをとってばかりいた。周りから見たらなかなか面白い光景だったろう。でもそんなことだけじゃなかった。プラットホームで電車を待っていたら線路に突き落とされたんだ。あやうくひかれるところだった。
七月二七日(木) 雨
今日、ぼくはシオノギという名の狼男だった。狼男といっても普段はただの人間なんだ。でも、満月を見ると、顔が狼になってしまうのだ。今日は満月だったらしいんだけど、朝から雨が降っていて、夜、月が出なかった。そのおかげで狼にならずにすんだ。でも、なんだか知らないけど、道を歩いているだけで周りの犬が逃げ出したし、猫を撫でようとしたらひっかかれた。さんざんだ。
七月二八日(金) 晴れ
今日、ぼくはカマキリだった。人間の大きさに慣れて生活をしていると、小さいと、すごく不便なことがわかった。しかも、子供がぼくをつかまえようとした。必死で逃げたけど、そう簡単に逃げ切れる相手ではない。結局つかまって、虫かごに入れられてしまった。すごくせまかったです。
七月二九日(土) くもり
今日、ぼくは、軍人さんだった。敵とてっぽうをバンバンうち合った。敵にたまが当たった時はうれしかったけど、でも、悲しかった。となりにいた仲間がうたれた。むねをうたれたためそこをおさえていたけど、助からなかった。とても苦しそうだった。ぼくはうたれたくなかったけれど、軍人だからそうも言ってられない。死を覚悟して戦わなければいけない。
七月三〇日(日) くもり
今日、ぼくは悪い人だった。家ちんを払えと文句を言いに来た大家さんをナイフでさし殺してしまった。しかもそのあとコンビニで万引きをしたし銀行強盗もした。そして、家に戻ってきてからしばらくしたらけいさつの人がやって来て、「ご同行ねがえますか」って言うんだ。重要参考人ってやつだ。結局はしゃく放された。証拠がなかったらしい。驚いたのはそのことじゃなくて、何の事件の重要参考人だったかということだ。なんと、それは三〇人もの人が銃でうたれ殺されたっていう昨日の事件の話だった。やっぱり僕が犯人なんだけど、ばれてないみたい。
七月三一日(月) 晴れ
今日、ぼくは深海魚だった。深海は静かだった。暗かった。ひまだった。でも、そのおかげで一日中色々なことを考えることができた。宇宙人は本当にいるのか、とか、明日は何になるんだろうか、とか。こんな日があっても悪くはないものだ。
「頼まれた文章を解読したところ、このような内容であることが判明致しました」
学者が言った。
五ヶ月前、地球に墜落した未確認飛行物体は炎上していたが、鎮火後、内部から燃え残っていた書物の一部が回収された。学者は、地球上のどの文字文化とも全く一致しないその宇宙文字を解読し、今日、とうとうその内容を読み解くことに成功したのである。
「日にちや曜日の概念や文化的背景が驚くほど地球と類似しているじゃないか!」
学者に書物の解読を依頼した博士が興奮を滲ませながら言った。
「しかし、日によって自分が変わるなんて、一体どんな生物なんだ?」
未確認飛行物体の中からは、生物の痕跡と思しき残骸は一切確認されなかった。完全に燃え尽きてしまったか、あるいはそもそも機体が無人偵察機のような代物であったかは定かでない。
学者はある一つの可能性を示唆した。
「これが、必ずしも宇宙人の日記であるとは限りませんよ。日記の形式を借りているだけで、地球で言うSF小説のような、フィクションなのかもしれません」
「なるほど。確かにその可能性もあるな」
「頼まれた文章を解読したところ、このような内容であることが判明致しました」
超学者が言った。
二ヶ月前、ロブロンダ星に墜落した超未確認飛行物体は炎上していたが、鎮火後、内部で燃え尽きていた書物の一部が復元された。超学者は、ロブロンダ星上のどの超文字文化とも全く一致しないその宇宙文字を解読し、今日、とうとうその内容を読み解くことに成功したのである。
「日にちや曜日の概念や超文化的背景が驚くほどロブロンダ星と類似しているじゃないか!」
超学者に書物の解読を依頼した超博士が興奮を滲ませながら言った。
「しかし、日によって自分が変わるというしごく一般的な超日記部分を読んで不思議がっているなんて、一体どんな超生物なんだ?」
超未確認飛行物体の中からは、超生物の痕跡と思しき残骸は一切確認されなかった。完全に燃え尽きてしまったか、あるいはそもそも機体が超無人偵察機のような代物であったかは定かでない。
超学者はある一つの可能性を示唆した。
「これが、必ずしも宇宙人の超日記であるとは限りませんよ。超日記の形式を借りているだけで、ロブロンダ星で言う超SFのような超物語なのかもしれません」
「……なるほど。確かにその可能性も超あるな」
(超了)
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