夢物語
青空零
第1話 指
少年Aは自分の手を見ていた。
なんの変哲もない手を。
そして、何を思ったのか、少年Aは左手で右手の人差し指を握り、力を込めて、引っ張る。
パッキ、
生々しい音が小さく響く。
左手には自らに引きはがした人差し指があった。非現実的な光景だったが、少年Aはうろたえず、無だった。
視線は右手に。
指は親指、中指、薬指、そして、小指と四本だけ。
本来、人差し指がある個所には、
血が流れて、
はいなかった。
時が止まったかのように、血は氷柱のように固まっていた。
すると、今度は中指に変化が。
徐々に皮が溶けるように垂れていく。皮はぐちょぐちょになり、爪も交わり、下ってゆく。途中、何度も進行が止まったりしていた、まるで無様にあがくように。
溶けていく一方で、人差し指が生えてくる。
中指が完璧に無くなったころには、人差し指が完全に復活していた。
消えた中指を見つめていると、次は薬指が溶けていく。全く同じように消えて、その代償で中指が生まれる。
次は小指、また次は親指、そのまた次は人差し指と、
今もなお、誰かの夢の中で、少年Aの右手の指は消えて、再生を続けているでしょう。
夢物語 青空零 @aozorarei
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