第5話 話せないこと

 本来はけして公にされることのない趣味だ。

 学校内のそういうペアもいたということで、私はほんの少しだけ興味があった。

 見るだけならば、権利侵害もないだろう。

 そう言い聞かせて、女の子のカップルが運営しているサイトをのぞいてみたことがあった。サイトのコンテンツにはなれそめというページがあった。

 お互いの第一印象まで素直に書いてあった。

 毎月記念日を決めて言わっているサイト、何ヶ月目と数えてトップページに掲載しているサイトなど様々だった。

 彼女たちの中にどれだけ相手のことを純粋に愛しているのだろうと疑問に思う。

 その関係は性欲のためだけではないのかと問いかけてみたくなる。


 そんな疑問を抱きつつも羨ましく思ってしまう。

 好きと素直に相手に伝えることが出来て、相手も素直に受け取ってくれる関係性にあこがれた。

 現実には主張できる環境がないからせめてサイトの中でお互いの気持ちをたかめ合っているのだとしても。

 きっと私の見たサイトは数少ない成功例だったのだろう。世の中には片思いの掲示板も転がっているし、浮気されてショックだと訴えている掲示板も存在する。

「それでもいいよ。聞きたいな」

 メールはいきなり長文になった。


 『私性被害にあったんだ。高校2年の夏だった。小学校のころから遊んでいて、好きではないけれど信頼していた男の子だったんだ。

 でも彼の方は違ったみたいでね。彼の中では告白する対象だったらしかったの。好きっていうそぶりも全く感じなかったんだ。

 いきなり空き教室に連れ込まれて馬乗りになられて「好きだからシよ」

 って。むりやり……。

 それ以来、男性恐怖症になっちゃって、

 町の中歩くのも怖いんだ。そんなとき親友に告白されたんだ。

 悩んでいる私を見てられないってさ

 本当にありがたかった。

 汚いカラダも受け入れてくれた。

 だから同性好きってなったんだ

 引いた?』


 体を求められて男性が嫌いになったなんて同じ人がいるとは思わなかったし、こんなこと周囲の人に言えるわけがなかった。

 だからとても近い存在なのだと思った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る