第17話 冒険者ギルドに着きました

俺とスイは宿を出て冒険者ギルドを目指して歩いている。


換金もそこで出来るらしいからついでに換金も済ませる予定だ。


道案内をしてくれるスイは、この辺りにはあまり来たことがないようなので、辺りを見回しながら案内してくれている。


「今更だけど、冒険者も奴隷といることはあるのか?」


さっき宿で冒険者が奴隷を連れているみたいなことを言っていたので、聞いてみる。


あまり奴隷という言い方は好きではないが、他の言い方がわからないからとりあえずは奴隷と言うことにする。


「そうですね、奴隷を盾にする人や囮にする人がいるとかは聞いたことがあります。」


スイが口元に人差し指を当てながら教えてくれる。


「でも、安い奴隷だけですよ、安い奴隷は銀貨数枚とかですから。」


病気持ちや、容姿の優れない女などや、老人などが安くなるらしい。


正直気分はよくない。


「そっか。」


俺はなんとなくスイの頭を撫でた。


「ご主人様?」


スイが不思議そうな顔を向けてくる。


「別に、それより早く服と髪なんとかしないとな、せっかくかわいいのに。」


スイは未だに服がボロボロだ、俺の服を貸そうにも、俺も服を一枚しか着てないから貸したら俺が捕まりそうで出来ない。


髪もボサボサのままだからなんとかしてあげたい。


「ご主人様、見られてますよ。」


スイが俯いて恥ずかしそうに言う。


辺りを見ると鬱陶しい視線がこちらに向けられていた。


「どこも生きづらいのは変わらないんだな。」


前世でも、周りと少し違うだけで白い目を向けられる。


結局どこでも本質は変わらないということらしい。


「ご主人様?」


スイが俺の独り言を聞いて不安そうになっている。


「なんでもない、行こう。」


俺はスイの頭から手を離して歩き出した。


「あっ、こっちです。」


スイが右の道を指さした。


「あっ、はい。」


俺は素直にスイについて行くことにする。


断じて方向音痴だからではない。


そして少し歩いたらスイが立ち止まった。


「ここです。」


スイが目の前の建物を右手で示した。


大きさ的には学校の体育館ぐらいの大きさのある、入口に大きな扉がある建物があった。


「サンカラね。」


おそらくギルド名だと思われる看板にサンカラと書いてある。


「はい、後お城の向こうにもうひとつあります。」


この国はそこそこに広いから一つのギルドでは足らないらしい。


なので襲撃の多い東と西に冒険者ギルドを置いてあるらしい。


「スイ、ありがとう。」


道案内をしてくれたスイの頭を撫でて感謝を言う。


「いえ、そんな。」


スイは顔を赤くして顔を伏せてしまった。


「入るか。」


ここでスイの頭を撫で続けてもいいけど、また視線を集めてもめんどくさいのでやめて中に入る。


中に入ると人が大量にいた。


軽く見ても、大剣を装備した奴や杖を持っている奴、弓など様々な武器を持った奴がいる。


(人がいすぎて気分悪くなりそう。)


俺は人が多い場所が得意ではないので、一箇所にこれだけ多くの人がいると気分が悪くなる。


俺は気分が悪いのを誤魔化しつつ受付を探しながら歩く。


「ご主人様、大丈夫ですか?」


表情に出ていたようでスイが心配してくれた。


「多分、二分で慣らす。」


いつまでもこのままだと、スイの心配が取れないので頑張る。


そして受付らしい場所を見つけたのでそこに行く。


「うわ、亜人連れじゃん、こっち来ないで。」


受付には二人、人がいて俺の近づいた方の受付が明らかに嫌そうな顔をして手で払ってきた。


そのせいでスイが俺の袖を掴んで後ろに隠れてしまった。


(うわー、死ねばいいのに。)


俺はその受付をスルーして、隣の受付に行った。


正直殺したくなったけど、ここでそんなことをやったら、スイに迷惑がかかる可能性が高いから堪えた。


「すいません、ご不快にさせてしまって。」


こっちの受付は幾分かはまともらしい。


「私はラナと言います、初めての方ですよね、今回はなにをしに?」


気弱そうな人だ。


隣と比べるととてもいい人に見える。


「冒険者の登録と、買取をしてもらいたくて。」


「わかりました、冒険者の登録には試験がありますので、それをクリアしないと冒険者にはなれないので、先にご理解を、その試験をクリア出来なかったとしても買取は致しますのでそこはご安心を。」


ファンタジーではよくある設定なので、想定通りで安心した。


「試験と言うと?」


「まず先に冒険者にはランクがあります、最低がFで最高はSになります。」


俺は頷いて話を進めてもらう。


「次に試験ですが、最初に始められるランクを選ぶことが出来ます、Fを選ぶとFに見合った試験が課せられて、Aを選ぶとAに見合う試験を課せられます。」


(ショートカット出来るのか。)


普通ならランクを上げるのは、それ相応の実績がないと上がらないのが普通だが、いきなり上がることが出来るらしい。


(楽でいいな。)


「どれにするかは決まってますか?」


「今やってすぐ登録出来るのはどれなんだ?」


正直、ランクはDかC辺りがいい、あまり悪目立ちはしたくないから。


「それはAだけですね、Aはここのギルド長を納得させることなので、でもおすすめはしません、Aに挑戦して成功した人はいませんので。」


(納得か。)


倒すだけならなんとかなるかもしれないけど、納得となると少し難しい。


でもそれが出来たとしても、それだけでAランクになれるのは大丈夫なのかと少し不安になる。


「別にそれに挑んで失敗した場合他のランクには挑めるんですか?」


「はい、でも挑めるのはFだけになります。」


(そりゃそうか。)


自分で出来ると言っておいて出来ないなんて、そんなのは依頼を受けるに値しない。


「わかりました、じゃあAで。」


「いいんですか?」


ラナは不安そうな顔で聞いてくる。


「はい、そんな時間かけたくないんで。」


俺はこの国をさっさと出たいので、試験なんかに時間を使いたくない。


「はっ、無理無理、そうやって挑んでいったバカ共がギル長に返り討ちにされて出てくんだから。」


隣で聞いていたらしい受付の女が口を挟んできた。


「インカさん!」


ラナが隣の受付に叫んだ。


「なんだよ、事実だろ、あんたが止めないからギル長の仕事が増えんだよ。」


インカと呼ばれた受付はニヤニヤとしながらラナを責める。


「それは…。」


ラナが言葉に詰まってしまった。


「どうでもいいから早くしてくれませんかね、俺はあなたと話してるんですけど。」


俺はラナを見ながら言う。


「ほんとにやるんですね?」


「はい。」


ラナは立ち上がって受付のカウンターから出てきた。


「こちらに。」


「終わったら笑ってやるよ。」


インカがなにか言っているが無視してラナについて行く。


「インカさんがすいません。」


歩きながらラナが謝ってきた。


「あなたが謝ることじゃないでしょ、あなたはあなたの仕事をしたんですから。」


俺は別にこの人を完全に信じてる訳ではないが、表面上だけでもちゃんと仕事をしている人をふざけてる奴が馬鹿にしてるのが気に食わない。


「ありがとうございます。」


ラナが肩を震わせている。


「ところで、連絡とかはいらないんですか?」


受付から今までなにか連絡をしている仕草があったようには見えなかった。


「あぁ、はいギルド長は戦うことが大好きなので、基本的にここにいる時は闘技場にいるので、それに試験を受けたいと言ってきたら『すぐに通せ。』と言われているので。」


「なるほど。」


ギルド長が戦闘狂なのもよくある話なので驚きはなかった。


「ところで、その亜人さんは一緒に戦うんですか?」


ずっと俺の後ろに隠れているスイを見る。


「スイが戦う必要があるなら連れてくけど、別に俺一人でいいなら一人でやりますよ。」


「一人でも大丈夫ですけど、ほんとに強いですからね、ギルド長は戦うことだけならこの国で三番目くらいに強いらしいので。」


ラナが最後通告をしてきた。


「はい。」


「では、いってらっしゃいませ。」


ラナが振り向きお辞儀をしてきた。


(そういうやつかよ、)


「スイ、離れるなよ。」


「はい。」


スイが俺に抱きついた。


(そこまでしなくてもいいけど。)


役得だからなにも言わない。


そして俺達は転移した。


「お前が挑戦者か。」


転移された先の真隣に人がたっていて、話終わるのと同時に殴りかかってきた。


「そうですよ。」


俺はそれをスイをかばいながら受け流して、カウンターで裏拳を入れる。


「ほぅ。」


ギルド長らしき人は俺の手が当たる前に後ろに飛んで避けた。


「なるほど、なかなかやるな、今まではこれで終わってたからとりあえずはCレベルはあるな、滾る。」


今のが最初の試練のようだ。


これから第二ラウンドのスタートだ。

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