第14話 俺はお前を許さない
ボスとのちゃんとした戦闘はこれで二回目になる。
一回目は会ってすぐの時に挑んで、なにも出来ずに負けた。
俺とボスとの出会いは六年前、俺の村が巨大な鳥の魔獣に襲われた時に俺の村に来たのがボスだった。
鳥の魔獣はいきなりやってきて、村の人を殺して回った。
俺は逃げ回った、ただ走った、そして最後の一人になった、両親と弟、友達も全員死んだ。
俺もここで死ぬんだと思った、でもそこで、ただ殺られるのは嫌だと思い、一矢報いようと鳥の魔獣と戦った。
結果ギリギリのところで勝った。
腹は抉られ、右腕もなくなっていた。
俺は自分のその姿を見て悲しみよりも笑いが込み上げてきた。
そして、一日笑い続けたらボスがやってきた。
「あれは君が?」
ローブを被った男が魔石を指さしながら、俺に声をかけてきた。
「そうだよ、だったらなんだ?」
正直もうこのまま笑って死にたかった、このまま生きていても俺に生きる道はないと思ったから。
「ジェライト、治してやってくれ。」
「ん。」
ジェライトと呼ばれた女はそう言うと、俺に近づいてきて、俺の傷を治してきた。
「やめろ、俺はもう生きる意味がない。」
村の人は全員死んで、生きていても、もうしょうがない。
「それを、私が与えてやるよ。」
ローブを被った男が俺にそう言う。
「終わった。」
ジェライトは俺の傷を治し終わるとローブの男の後ろに戻っていった。
「ありがとう、魔獣を素手で倒す君をスカウトしたい、私達、盾に。」
正直なにを言っているのかわからない、けど。
「あんたは俺を残して死なないか?」
俺はもう、人が死ぬのを見たくない。
「もちろん、私これでも結構強いから、試してみる?」
そう言って、ローブの男は構える。
「はぁぁ。」
俺は立ち上がるのと同時にローブの男に突っ込んだ。
「止まれ。」
「なっ。」
ローブの男がそう言うと、俺は体が動かせなくなった。
「はい、これで終わり。」
ローブの男がそう言って、俺にデコピンをした。
そして俺の体が後ろに倒れる。
「次は勝つ。」
「いつでも相手をしてあげるよ。」
ローブの男は振り返って歩き出した。
「いつか、勝つ。」
俺はそう言ってついて行った。
その後、ボスの魔法のタネを探ろうと何度か挑んだが、魔法なしでも負けて、魔法を使われたらすぐ終わった。
その幾度の負けをここにすべて使う。
「いくぞ、ボス。」
俺はそう言って、ボスの側面に回り、蹴りを放つ。
「止まれ。」
また俺の動きが止まる。
「なんとかの一つ覚えか、それは何度もやったぞ。」
確かにこれは今まででもやった、でもこの後は初めてだ。
「燃えろぉぉ。」
俺は全身を炎で包む。
そして左足に衝撃を与える。
その結果、体が動き、蹴りがボスの腹に直撃した。
「かはっ。」
ボスが木にぶつかり血を吐いた。
「どうだ、もうボスの魔法は効かないぞ。」
ボスの魔法は体の動きを止めることが出来るが、衝撃に弱い。
デコピン程度の衝撃でも解けるぐらいに。
だからボスは魔法が使えない相手でなおかつ一人の奴にしかあの魔法を使わない。
それに気づいたのが、二年前。
それから俺は魔法を勉強しだした。
俺は魔法の適正がなかった為、魔法は使えない。
だから考えた、最終的に至ったのは魔道具。
「その程度で死んだりしないだろ、早く来いよ。」
さっきから動かないボスに叫ぶ。
「魔道具か、ルベウスは魔法を使わないなんていう先入観のせいで考えもしなかったよ。」
俺の魔道具はネックレスタイプだから、周りにも見えない。
この魔道具は体に炎をまとうという、地味な魔道具だ。
しかも、魔道具を発動すると自分にダメージを与えるという人気のない魔道具だ。
でも、ボスとの戦闘に関して言えば、とても有効的だから手に入れた。
「いくぞ。」
俺はまたボスに突っ込む。
「止まれ。」
また動きを止められた。
「だから、効かないって。」
俺はまた炎をまとって今度は背中に衝撃を与えた。
「くっ、らえ。」
俺はボスに蹴りを放つ。
「止まれ。」
「だから、効かないんだよ。」
衝撃を今度は左腕に与える。
その間にボスには逃げられた。
「逃げてるだけか。」
俺は追いかけて飛び蹴りをする。
「止まれ。」
今度は右腕に衝撃を与える。
「止まれ。」
俺が衝撃を与えた瞬間にまた、動きを止められた。
「これで五回目だ。」
ボスがこちらを向いて喋りだした。
「なに言ってんだ?」
ボスがなにを言ってるのかわからない。
「お前、気づいてないのか?その魔道具の限度五回だぞ、それ以上は体が動くようになるまで一日かかるぞ。」
ボスが俺の側面に回ってそんなことを言う。
「そんな嘘に引っかかるとでも?」
俺はこの魔道具で実験をした、その結果この魔道具の衝撃には七回耐えられた。
だからその七回が勝負だと思い、チャンスをうかがっていた。
「嘘だと思うなら使えばいい、試しに使ったとかならそれは運がよかっただけだ。」
そんなことはない、確かに七回耐えられたのは一回だけで、次の日はまともに動けなかった、普通は三回、四回でやめていた。
「どうした、やらないのか?」
ボスが俺を煽ってくる。
「やらないなら、死ね。」
ボスが俺に手を伸ばす。
ボスの魔法の一つに、触れただけで相手を殺す魔法があるから多分それを使おうといている。
「待ってたよ。」
俺は炎をまとって右足に衝撃を与えてスピードと殺して、ボスに抱きつく。
「なんのつもりだ?」
「絞め殺す。」
ボスにいちいち近づくのはめんどくさいから、一度捕まえればいくら止められても関係ない。
ボスの触れる魔法も手のひらに触れられなければどうということはない。
そして今、俺の体は燃えているから炎のダメージも入る。
「これで終わりだ。」
これが俺の考えた全力、もう体は動かない、これを解かれたらなにも出来ない。
「この程度で私を殺そうと?」
炎の中なのに寒気が走った。
離れなければ死ぬのはわかる、だけど今離れても結局死ぬ、だったら。
「さっさと死ねぇ。」
「残念ですよ、でもルベウスがいたお陰で随分楽が出来ましたよ、ありがとう。」
ボスがなにを言っているのかわからないけど、もうそんなのどうでもいい、今ここで殺す。
「どうやら、聞こえてないようなのでいいこと教えてあげよう。」
(なんで死なない。)
さっきから本気でやっているのにボスは余裕を崩さない。
「あなたの村を襲った鳥の魔獣、私が放ったんですよ、私の実験の為に。」
「は?」
俺は思わず力を緩めてしまった。
「どきなさい。」
俺は風の魔法で吹き飛ばされる。
「私には魔石が必要でね、それを効率よく回収する為に私の組織盾を使ってるんですよ。」
ボスが俺に近づきながら淡々と言う。
「でも、魔獣を殺せる人なんてそんな簡単には見つからないでしょ、だから村とかに保革した魔獣を放ってそれから逃げられた人をスカウトしてるんですよ。」
なんだかとんでもないことを聞いている気がする。
「魔獣を捕獲?そんなこと出来る訳ない。」
魔獣を殺すことは俺でも出来る、でも捕獲となると、兵器を使っても難しい、というか出来ない。
「あなたはね、私には出来るんですよ、でもあなたには驚きましたよ、まさか魔獣を素手で倒すなんて、そんなの私を含めて三人目でしたよ。」
「そんなことはどうでもいい、つまりお前が俺の村を襲った犯人ってことか?」
「そうですけど、それがなにか?」
なにかが切れた気がする。
それがなんなのかはわからないけど、多分切れたらいけないやつだ。
「殺す、来い。」
俺が呼ぶと、俺の相棒の兵器が飛んできた。
そして俺の体に装備される。
これは魔法の使えない俺の余っている魔力を無理やり食って動力にする防具だ。
これを装備すると、単純に力も速さも上がる。
そして動けない俺の体を無理やり動かすことも出来る。
「お前をころ。」
「遅いよ。」
俺がボスの方を向くと、ボスが雷の弾を撃っていた。
「かっ。」
直撃して、意識が飛ぶ。
(俺は、復讐どころか、復讐相手に手を貸してたのか。)
そんなことを思って、意識が消えた。
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