第13話 ボスと対面した
「よう、アマリ手下はどうしたんだ?もしかして魔獣ごときに全滅か。」
魔獣退治に行っていたアマリが一人で帰ってきたから話しかけた。
「ルベウスさんですか、色々ありまして部下は全滅です。」
なんだかいつもの余裕がないように見える。
「まったく、お前は弱いんだから気をつけろっていつも言ってるだろ、弱いんだから。」
俺達盾はボスが集めた精鋭の集まりだ。
俺とアマリ、他に二人とボスの五人がメンバーで、弱いアマリは大量の手下を連れている。
俺は手下を連れず、他の二人は二、三人の手下を連れているらしい。
「わかってますよ、それよりボスはまだ帰ってきていないですか?」
「ああ、帰ってくるのは明日の朝頃だろ。」
ボスは趣味が有力者を探すことだから、ちょくちょく探す為に出かける。
行き先は俺達にも教えられないから急な知らせを伝える方法がない。
「そうですか、ではそれまで待つことにします。」
そう言ってアマリが俺を抜けて進んで行った。
「ちょっと待てよ、なにがあったんだ?」
なにかがあったと言っていたが、それは魔獣にやられた訳でもなさそうだし、貴族になにかされた訳でもないだろうからアマリに聞く。
アマリは俺達に比べたら雑魚だが、トゥレイスの中なら俺達を除けば誰にも負けないはずだから。
「ルベウスさんには言えないです、多分悪いようにしかならないので。」
アマリがそう言ってまた歩きだした。
「おいこら、待てよ。」
そこまで言われたら黙ってられない。
「お前が俺に意見か?雑魚が調子に乗るなよ。」
俺はアマリの前に回り込み胸ぐらを掴んだ。
「ボスの判断を仰ぐまでは言えないです。」
いつもなら俺に反抗をしないアマリがここまで言うことだ、相当なことがあったんだろう。
「いいから言え、お前負けたんだろ、俺がその敵討ちをしてやろうって言ってんだよ、ありがたく思ってさっさと言え。」
敵討ちとは言っているが、ただ強者と戦いたいだけだが。
「ルベウスさんじゃ勝てないですよ。」
「あ?」
アマリが意味がわからないことを言っているので、胸ぐらを掴みながら持ち上げる。
「なんて言った?俺が勝てないとか言ったのか?」
アマリごときに舐められたことを言われて本気でキレている。
「そうですよ、ボスでも勝てるかわからないぐらいですよ。」
アマリは首が少し締まっているようで、声がかすれている。
「ボスまでバカにするか、じゃあ死んでもしょうがないよな。」
俺はアマリを床に投げつける。
「かはっ。」
アマリが口から血を吐いた。
「血じゃなくて情報を吐けよ。」
「あの人に手を出したらトゥレイスが滅ぶことになるんですよ。」
アマリが血を吐きながら叫ぶ。
「だったら尚更だろ、それをさせない為に俺が殺してやるって言ってんだよ。」
情報を聞く為に生かしているが、そろそろアマリを殺したくなってきた。
「だからルベウスさんじゃ勝てないんですって、わかってください。」
「もういいや、死ね。」
俺はアマリに拳を振り下ろした。
アマリが動きを止めたのでその場を離れる。
そしてアマリが魔獣退治に行った方の壁の上に行った。
ここならアマリをやった奴が来る可能性があるから。
そして一晩ここで待っていたら明らかにヤバそうな奴が来たから相手をしに行った。
なのにそいつは俺を無視してトゥレイスに向かって走っていきやがったから追いかけた。
そして追いついたので最後の飛び蹴りを仕掛けた。
「止まれ。」
背後から声が聞こえ、俺の体は止まった。
(やばいかも。)
俺は怖くて後ろを向けなくなってしまった。
(なんだ?)
俺は先に手を出したらこっちが不利になると思い、追ってくる奴は無視していた。
だけどしつこく追ってきたから仕方なく壁に向かって走った。
案の定門番がいて、都合よく追ってきた奴が飛び蹴りをしてきたからそれをぶつけて、俺は被害者面をして普通に入ろうとした。
なのに現状は、目の前で飛び蹴りしてきた奴がその状態で止まっている。
「なにこれ?」
俺は腕の中のスイに聞く。
「わかりません。」
スイも驚いた顔をしている。
「ボス、なんでここに?」
俺達がいた森からローブを被った男が出てきた。
体を止められていても喋れはするらしい。
「アマリに聞いたんだよ、お前が手を出してはいけない相手に手を出しに行ったって。」
ボスと呼ばれた男は静かな声なのに、とても圧のある声で話している。
「それは、アマリの奴が負けたりするから、っていうかあいつなんで生きてんすか?」
「ジェライトが治したんだよ、それで帰った私がアマリから話を聞いたんだが…、ルベウス、いい加減にしろよ、自分が強いっていう自信はいい、だけどそれを他の奴にぶつけるなっていつも言ってるよな。」
なんか始まったが、正直どうでもいい。
「なぁ、あれ誰なんだ?」
俺とスイの後ろでさっきから片膝をついている門番に話しかける。
「あの方達はトゥレイスの盾、ルベウス様とルーサイト様だ。」
右側の門番が律儀に答えてくれた。
「あいつの同僚ね。」
アマリはどうやら俺には関わらせないようにしてくれたようだが、未だに飛び蹴りの状態で止まっているこの馬鹿が勝手に俺に構ってきたと。
「ボス、それよりこれ解いてくださいよ、もういいでしょ?」
ここでの話し合いを聞く限りでも、ルベウスと呼ばれた奴は自信過剰で軽いイメージが出来た。
「駄目だ、解いたらまた暴れるだろ、しばらくそれで反省してろ。」
そう言ってルーサイトと呼ばれた男が俺の方に近づいてきた。
「アマリから大まかな話は聞きましたけど、あなた相当な力を持っているらしいですね、アマリの部下を全滅させ、アマリをあそこまで追い詰めるなんて。」
ルーサイトはローブを被ったまま、なぜか喜んだ様子で話している。
「あいつに言ったはずだぞ、俺達に構うなって、もしそれを破るならどうなっても知らないと。」
言ったのはスイだけど、いちいち説明するのも面倒なのでこのまま話す。
「こいつはその話を聞いた上で俺のところに来てこんなことをしたんだよな?」
ルーサイトは無言で話を聞いている。
「では、こうしませんか、あなたとルベウスが戦ってあなたが負けたら今回のことを水に流してもらって、勝ったらルベウスをあなたのしたいようにして構いません、それと私がトゥレイスで出来る限りのことをします。」
ルーサイトがいきなり口を開いたかと思ったら、そんなどうでもいいことを言い出した。
「それ、そっちの得少ないだろ、なにが目的だ?」
明らかに俺の得が大きい、かと思ったけどルベウスを殺して、ルーサイトからなにかをしてもらうと言っても別にそこまでだった。
「そんなことはないですよ、あなたを敵に回すのはそれだけ大変だということですよ。」
「あっそ。」
さっきからルーサイトが嘘を言ってないかは見ているが、嘘は言ってない。
敵に回したくないのはほんとのようだが、なんだか信用が出来ない。
「どうです?ルベウスはこれでも女なんですから、色々とお楽しみ出来ますよ。」
(なんかすごいことを聞いた気がするけど。)
スイが俺の服を強く握ってきた。
「男だと思ったでしょ。」
「まぁ…、男にしては声が高いなとは思ったけど。」
スイがジト目で俺のことをじっと見ている。
(かわいいな。)
「で、どうです?」
「あ?いや別にいいぞ、ただそいつは殺すけどそれで俺になにもしないと約束出来るか?」
俺はルベウスを指さしながらそう言う。
「もちろん、では勝利条件は先に相手の膝をつかせるということで、方法は問いません、ただ殺すことはなしで、では、初め。」
ルーサイトが話の終わりにルベウスの拘束を解いた。
それと同時にルベウスが突っ込んできた。
(なんとこすい。)
ルベウスが突っ込んできた勢いを乗せて回し蹴りをしてきたので、姿勢を落として軸足をさらった。
そしてルベウスは膝をついて。
「なるほど。」
「これでいいか?」
なにかを考えているルーサイトに聞く。
「はい、もちろんです、この勝負はあなたの勝ちです。」
くだらない勝負が終わったので俺はルベウスに近づく。
「ふざけんなぁ。」
ルベウスが立ち上がり俺に殴りかかってきた。
「止まれ。」
「なっ。」
ルーサイトがまたルベウスの動きを止める。
「ルベウス、これ以上トゥレイスや盾のイメージを悪くするな、お前は負けたんだ。」
ルーサイトがルベウスにさっきまでとは違ってとても低い声を出す。
「ボ、ス。」
ルベウスは涙を流した。
「さぁ、お好きにどうぞ。」
ルーサイトが両手を開いてルベウスを差し出した。
「ご主人様…。」
スイが俺の腕の中から視線を向けてくる。
「わかってるよ。」
俺はルベウスに近づく。
「くそっ、くそが。」
「ルベウス。」
俺はルベウスの涙を拭う。
「なにを?」
ルベウスが不思議そうな顔をする。
「ただの同情だよ。」
俺はルベウスにかかっている魔法を解いた。
「そこまでか。」
ルーサイトが静かに言う。
「どうする、お前のボスはお前を見捨てたけど復讐するか?」
俺はルベウスに最後の復讐のチャンスを与える。
「やるさ、ボスには恩があるが、それでも殺る。」
ルベウスが立ち上がりルーサイトと向かい合う。
「やる気なのか、いいぞ久しぶりに遊んでやろう。」
ルーサイトもやる気を出し、構えた。
そして二人の戦闘が始まった。
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