第11話 これからについて話をしました

「スイちゃん、恐ろしい子。」


ずっと黙って見ていた自称神が口を開く。


「確かに、あれはいいな。」


ただ殺すことしか考えてなかったリンの奴に、ちゃんとした復讐の仕方を教えてくれた。


復讐は相手の一番嫌がることをしなければいけない。


それを早くにしれたのはよかった。


「スイちゃんって何者なんだろう。」


自称神が顎に手を当てながら考えるている。


あのスイとかいう亜人はあの世界のことを知ってるだけではなく、なにか変だ。


復讐慣れしているというか、思い描いた復讐を実行しているような、そんな感じがする。


「スイちゃん、奴隷だった時になにかあったのかな?」


自称神はさっきから自問自答を繰り返している。


(多分違うよな。)


あの亜人は奴隷だった時に復讐のやり方を勉強して今回実践してみたのだと思う。


あくまで予想だが。


「クロガネ君はどう思う?」


「知るか。」


自称神に聞かれたが、めんどくさいので答えない。


「酷い、少しは考えてくれてもいいのに。」


自称神が拗ねた。


「かわいくないから、拗ねるな。」


「拗ねるぐらいいいじゃん、ケチ。」


自称神がそっぽを向く。


「続き見ればわかるだろ。」


「それもそっか。」


自称神はモニターに視線を戻し、機嫌も元を戻った。


(あの亜人といれば、あいつは。)


なんてことを思いながら、俺も視線を戻す。




謎の施設を出て、俺とスイは途方に暮れていた。


「ここどこなんだ?」


森の中ではある、でも道はなく、草が生い茂っている。


「どこでしょう?」


スイも俺も元々この森のことはわからなかったからどこにいても迷子なのは変わらないけど、さっきは道があったから道なりに進めばよかったけど、今はその道もない。


「飛行魔法はイメージがしづらいから、今すぐは出来なそうだし、探索系の魔法でもやってみるか?」


俺は周囲に淡く魔力を広げていく。


魔力を通じて辺りの木は感じる、後は小動物が少し。


「もう少しいけるか。」


今は多分、半径一キロぐらいの範囲を探っている、けもの道はいくつかあったけど、整備された道が見つからない。


(この森広すぎだろ。)


そして二キロぐらい範囲を広げた辺りで道を見つけた。


「あった。」


おそらくさっきまでいた道だと思う、近くにテントなどの野営道具があるからさっきの場所だと思う。


「ご主人様、サーチも使えるんですね。」


どうやらこの魔法はサーチと言うらしい。


「まんまだな、今覚えた。」


「今って、ご主人様は魔法を見て覚えるだけじゃなくて、その場で使えるようにも出来るんですか?」


スイが純粋で透明感のある瞳で聞いてくる。


(かわいいな。)


「イメージしやすいやつはな、飛行魔法とかは難しいかもしれないけど、これはイメージしやすいから出来た。」


他にもスイの回復魔法も独学では出来なかっただろう、あれはまったく理論がわからない。


「なるほど。」


「スイはどうやって魔法を覚えたんだ?」


スイは回復魔法と能力を引き出す力、それと解毒魔法が使える。


この世界ではどう魔法を覚えるのか気になったので覚え方を聞く。


「私は覚えた訳ではなくて、元から使えました、普通魔法は生まれつき覚えているか、後から覚えるかなんですけど、後から覚えるのは結構難しいんですよ。」


スイが両手で自分の服を掴みながら真っ直ぐ俺を見ながら言う。


(なにしててもかわいいな。)


「生まれつき覚えてるって、赤ん坊の時から使えるのか?」


「いえ、赤ちゃんの時は魔力がないので使えないです、だいたい十歳辺りで魔力があると、鑑定をされて魔法が使えるか見てもらって、そこで使える魔法を知ります。」


俺は言葉が少ないのに、スイは俺の聞きたいことを理解して全部説明してくれた。


「なるほど、じゃあ後から覚える方法ってなんなんだ?」


「それは、まず、その魔法の理論を理解して、イメージをして発動するって感じなんですけど、そのイメージと発動が難しいらしいです、私はやったことがないからわからないですけど。」


つまり俺がやってたやり方はあってたらしい。


俺は使いやすい魔法を選んで使っているから別にすごいことではないと思う。


「わかった、ありがとう、とりあえずはあの野営道具使わせてもらうか、まだ暗いし。」


辺りはまだ暗い、時間的には深夜の三時くらいだと思う。


「でも、この暗さで森を進むの危なくないですか?」


「ちなみになにが危ないんだ?」


辺りを探った感じ特に危なそうなものはなかった。


「より迷子には…、ならないですね、魔獣も反応がないんですよね、野盗もいないなら危なくないですね。」


スイは俺のサーチを信じてくれているようだ。


「じゃあ行くか。」


俺はスイをお姫様抱っこの状態で抱え、足に魔力を込め、前方に魔力の壁を作る。


「はい。」


スイが少し頬を赤く染めながら俺の服を掴む。


そして、テントがあった場所に走り出す。


だいたい一分くらいで着いた。


(二キロ一分か、以外のかかるな。)


スイが気分を害さないように気を使い、木や草などを避けながらきたのもあるのか、思ってたより時間がかかった。


「ご主人様、すごいです。」


スイが俺の服を掴みながら、透明な目を輝かせながら俺に言う。


「なにが?」


「移動の時の揺れもないですし、なにより早いです、この距離をこんな時間で来れるなんてすごいです。」


俺はこの世界の普通がわからないから知らないけど、これはすごいことらしい。


「そうなのか、スイにそう言われるとなんか嬉しいな。」


俺はスイに微笑みながらそう答える。


「ご主人様にそう言われて、私も嬉しいです。」


スイがとてもいい笑顔で言ってくれる。


俺はスイを下ろす。


「ご主人様?」


スイの耳と尻尾が下がり悲しそうな顔になる。


「スイ、ありがとう。」


俺はスイに言われたことが単純に嬉しく、感謝を伝えて、スイの頭を撫でた。


「ご主人様ぁ。」


スイの耳と尻尾が上がり、目に少し涙が溜まっている。


「よし、終わりがなくなるからなにかあるなら食べてから寝よう。」


このまま続けたら夜が明けるまで頭を撫で続けてしまうので無理やりやめる。


「はい。」


スイの耳と尻尾がまた少し下がるけど、今度は悪い方ではないようだ。


「一応は食料あるか、でも、あいつらの用意したものだと少し不安なんだよな。」


俺は鑑定の魔法を使えるか試したが、出来なかった、魔力の流れは見ることは出来たが、鑑定はさすがにイメージがつかなかった。


「多分大丈夫ですよ、毒の匂いはしません、私の鼻を信じてもらえるならですけど…。」


スイが自信なさげに言う。


「じゃあ食べるか、これが黒パンってやつか、初めて見た。」


食料の入っている包みを開くと黒パンと水が入っていた。


「さすが、質素。」


野営と言えば質素な食事と相場が決まっている、それを裏切られなくてなんかよかった。


「あまり長くいるつもりもなかったんですかね。」


どうやらこれは野営の中でも少ないようだ。


「それか、収納魔法にしまったのかもな。」


そこら辺はあいつに聞かないとわからないことなので考えてもしょうがない。


とりあえず俺とスイは黒パンを食べて適当なテントに向かった。


「寝ながらサーチって出来るかな?」


寝ているところを野盗やら、動物に襲われたら大変だから寝ながらサーチをして探っておきたい。


「それなら、設置系の魔法は使えませんか?」


「設置か。」


設置系のトラップの魔法なら確かに寝てるとかは関係ない。


「試してみるか。」


俺は周囲の木に魔力の糸を付けていく、そしてテントの周りに魔力で壁を作る、その壁に魔力の糸を繋げた。


そして、壁と俺を糸で繋げる。


俺は外の糸を切ってみる。


「これでいいか。」


糸を切ると俺に繋がった糸から振動がきた。


そして勝手に糸が修復された。


「パーペキ。」


トラップは完成したので俺はテントに戻った。


「ご主人様ほんとにすごいですね。」


スイが女の子座りで俺を待っててくれていた。


「ちゃんとしたのは今度覚えるけどな。」


これは簡易的なものなので、もっとちゃんとしたのを覚えたい。


「そう、ですか。」


スイがいきなりモジモジとしだした。


(かわいい。)


「あの、ご主人様、夜伽の必要はありますか?」


スイが頬を染めながら聞いてくる。


「俺から離れなければそれでいい、一緒に寝るのは大丈夫なんだよな?」


スイに離れられたら守れなくなるから傍にはいてほしい。


「はい、ご主人様なら夜伽も…、なんでもないです。」


スイが顔を真っ赤にして、顔を伏せてしまった。


「そっか、ありがとう。」


俺はスイの頭を撫でてお礼を言う。


とりあえずはそんな予定はない、スイに手を出したらなんか犯罪臭がする。


「スイって歳いくつなんだ?」


スイの見た目からしたら十、二三に見える。


「十二才です、あ、夜伽の経験はないです。」


前世では十二歳で処女は普通だが、この世界だと普通ではないのかもしれない。


「そっか、もう寝るか。」


俺はスイから手を離して横になる。


「はい。」


スイは俺にくっつくようにして横になった。


「邪魔ですか?」


俺がスイを見ていたら、不安気にスイが聞いてきた。


「そんな訳ないだろ、スイがそうしたいならそうすればいいよ。」


俺は出来るだけスイのやることを否定したくない。


(これの場合ただの役得だから断る必要もないしな。)


「はい。」


スイは俺の服を掴んで笑顔を向けた。


「寝る前に最後に一つ聞かせてくれ。」


「はい?」


ずっと聞きたかったけどなんとなく聞かなかったこと聞く。


「スイの目的ってなんだ?」


「目的?」


スイは明らかに普通ではない、死体を見ても動揺しないし、相手を陥れることに対してなにも感じていなかった。


(俺と同じで。)


だからなにか目的があって、あれはその通過点なのかと思ったから聞いてみた。


「言い方を変えると目標?なにかやりたいことってあるのか。」


「あぁ、それなら私を生贄に差し出した故郷に復讐しようかと。」


(なるほど。)


それを聞いて納得した、自分の故郷に復讐する為にどういう復讐がいいか考えて、さっきはその実践をしたようだ。


「嫌いになりました?」


スイが不安そうな顔をする。


「なんで?スイを傷つけた奴らなんだろ、じゃあ俺の敵ってことだろ、そもそもスイのやりたいことなら俺はそれを手伝うよ。」


今は勇者の情報がなく、やることが特にないから情報収集もかねて色々とやりたい。


「ありがとうございます。」


スイが俺の胸を顔を押し付けてお礼を言った。


胸に濡れた感触を感じながら俺は眠りについた。

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