第9話 プッツンしてしまった
(狭い。)
アマリと戦いながら思うことはとにかく狭い。
部屋の大きさは高さがだいたい三メートルぐらいで、縦横がだいたい十メートルぐらいだ。
部屋としては広いが、ここで二メートルぐらいのロボットと戦うには狭すぎる。
機体が少し動くだけで俺は場所を追いやられる。
その度スイを連れてどく必要がでてくる。
(どうやるかな。)
別に打つ手がないこともない。
アマリがやったように収納魔法で収納してしまえばいい。
ただそれだと全体を一気に収納したらアマリが付いてくるし、腕などを分けてやると使えなくなってしまう。
(別に使いたい訳ではないけど、なんとなくとっておきたい。)
そんなことを考えていたら機体の右腕から魔力の砲撃、魔砲が放たれる。
それを避ける、魔砲が壁に当たるが壁はなんともない。
さっきから部屋を広げようと何度かやっているが壊れない、魔法耐性があるようだ。
「逃げるだけか。」
アマリが時折このように煽ってくる。
「じゃあ反撃してみる。」
俺はもう考えることをやめて、とりあえず機体の周辺に炎を生成する。
「はっ、こいつには熱なんて効かねぇよ。」
そう言って俺に突っ込んでくる。
「死ね。」
機体の右腕が俺の頭上から振り下ろされる。
「凍れ。」
俺は周辺を凍らす。
「だから効かねぇんだよ。」
アマリは凍った機体を無理やり動かし氷を砕く。
そしてまた振り下ろしの続きがくる。
「飛んどけ。」
俺は風魔法で機体を壁まで飛ばす。
「ご主人様、もしかして魔法の練習してます?」
スイが俺の服をつまんで引っ張りそんなことを聞く。
「そう、今までの奴ら簡単に死ぬから練習出来なかったんだよ、でもあれ魔法耐性あるのかなかなか壊れないからちょうどいいかなって。」
とりあえず今は手からではなく、どこからでも魔法が出せるように練習している。
それはなんとなく出来るようになったので次にいく。
「なにが練習だ、効かない言い訳にしては苦しいぞ。」
アマリがそう言ってまた突っ込んでくる。
「爆ぜろ。」
突っ込んできた機体の足元を爆発させる。
「なっ。」
機体が後ろに倒れる。
さっきやったのと同じ原理で土魔法で火を覆い、衝撃の魔法を仕込んで爆弾もどきを作って足元を置いておいた。
さっきは水蒸気爆発の簡易版みたいなのをやってみたが、俺には爆発物の知識がないからなんとなくでやっている、だからいつ失敗して手元で爆発してもおかしくはない。
「くそっ。」
アマリが立ち上がりまた魔砲を放ってきた。
今度は一発の大きさは小さいかわりに連発している。
「今度は避けさせない。」
アマリが自信満々に声をあげる。
「避けねぇよ。」
俺は六属性全ての魔法を同時展開してぶつける。
ちゃんと相殺された。
「油断したな。」
「してねぇよ。」
後ろから魔砲が飛んできたので雷の魔法で相殺する。
「それで全部か?」
正直ガッカリだった、もっと汎用性が高いのかと思っていたのに、ただ質量があがって魔砲が撃てるだけだなんて、それしか出来ないなら別にいらない。
「舐めんな。」
アマリの乗る機体が両手をこちらに向けてきた。
「喰らえ。」
今度は両手で魔砲を撃ってきた。
威力は単純にさっきの二倍になっている。
俺はまたスイを抱き抱えて避ける。
だけど今度は魔砲が俺についてくる。
「追尾ね。」
俺はもう一度離れてからスイを下ろし魔砲に手を向ける。
「お前の底はわかってるんだよ、お前じゃそれを相殺出来ない、喰らって死ね。」
アマリが興奮気味に叫んでくる。
(底か。)
俺はまた六属性全ての魔法を展開して、ギアを一つあげる。
そして魔砲に俺の魔法をぶつける。
爆発音がして、土煙があがる。
「なんで…。」
アマリが言葉を失っている。
「一ついいことを教えてやるよ、俺まだ全力で魔法撃ってないから、まだギアはあがるぞ。」
俺の魔法は底は俺にもわからない、さっきキレてる時にも全力展開はしていない。
相手の撃つ魔法を基準にして自分の魔力量を決めているから、このままだといつまでも本気は出せない。
「ぬかせ、ほんとは使いたくなかったけど、やるしかないか。」
(お、なにかあるのか?)
決死の一撃でもあるのかと少し期待する。
「装甲解除。」
アマリがそう言うと機体の装甲が落ち、必要最低限の部分だけ残った。
今の見た目は、すぐに折れそうな細身になっている。
「行くぞ。」
アマリがそう言うと目の前に右腕を振り上げた機体がいた。
(早いな。)
俺は即座にスイを抱き抱え後ろに跳ぶ。
俺のいたところに拳が落ちる。
明らかにさっきより威力は落ちている。
(まぁ質量減って威力が上がったら困るけど。)
そんなことを考えていたらまたアマリが突っ込んできていた。
今度は両手でラッシュをしてきたので一つ一つかわす。
(威力が落ちたならくらってみるか?)
もしかしたら普通に耐えられるかもしれないけど、それがわからないからちゃんと避けている。
どうするか決めあぐねていると、機体が消えた。
「くそがぁぁ。」
アマリは俺に対して決め手がないと判断したのか後ろにいたスイに近づき拳を振り上げていた。
(どうするかなんて考えてる時間はないだろ。)
どうするかを考えた自分に言い聞かせ、スイの周りに魔力で障壁を張った。
とりあえずは障壁を壊すだけの威力はなかったようだ。
拳は止まり次の攻撃をしようとしたところに。
「死ねよ。」
俺のかかと蹴りかコックピット部分に入った。
「なっ。」
コックピット部分は砕け散りアマリが姿を見せる。
今度は見えたアマリに回し蹴りをする。
「かはっ。」
アマリは機体に穴を開けて後ろの壁に激突する。
俺はアマリに近づいていく。
(殺す。)
アマリはスイに危害を加えようとした、それがあいつを殺す理由。
元から殺す気ではいたけど、もうなにもさせない、今殺す。
「ミスったな、あの亜人はお前の地雷だったか。」
俺がアマリの目の前に着くとアマリが口から血を流しながらそんなことを言う。
それに律儀に答える義理もないので、俺はアマリに手を向ける。
俺は魔法を放とうとした時。
「ご主人様!」
スイが息を切らせながら走ってきた。
そして俺とアマリの間に入ってくる。
「ご主人様、駄目です。」
スイは両手を広げて真剣な眼差しで俺を見て言う。
「どけ、そいつは殺す今ここで。」
「だから駄目です。」
スイは俺の前から退こうとしない。
だんだん苛立ってきた。
「スイ、なにがしたい。」
スイのしていることの意味がわからない、アマリはスイを監禁した張本人だ、なのにそのアマリを庇う理由が知りたい。
「この人を殺しちゃ駄目です、理由はご主人様ならわかるはずです。」
スイがなんのことを言っているのかはわからない。
俺ならわかると言われてもなにもわからない、思うのはアマリを殺したいということだけだ。
「わからない、だから殺す。」
スイが悲しそうな顔をする。
「そうですか、じゃあどきません、ご主人様がわかってくれるまで。」
一切どこうとしないスイに苛立ちを覚えて俺はスイに近づく。
「スイ、もう一度言う、そこを。」
俺がスイの肩に手をかけようとしたところで、スイのみぞおちの辺りから水の槍が飛び出してきた。
「ちっ、届かなかったか。」
アマリが手をスイの背中に向けながら言う。
スイを貫通させ俺の心臓を貫こうとしたようだ。
「馬鹿な奴隷を持つと大変だな、そいつのおかげで俺は少し魔力が回復したから逃げさせてもら、がっ。」
アマリがベラベラとなにか喋っていたので、黙らせる為に顔を蹴り飛ばした。
「死ね。」
俺はただ、アマリに殺意を向けて走り出す。
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