第3話 亜人を奴隷にしました
「あ、やば人いるところに転移しちゃった。」
人のいない森に転移させたつもりがなぜか人がいた。
「ま、大丈夫かなしらないけど。」
そしてまた転移させた子を眺める。
「ところで、君は誰?」
さっき転移させた時にそこにはなにかが残っていた。
姿は見えないけど確かになにかいる。
「へー、俺に気づくんだな。」
さっき送った子と同じ声が聞こえる、そして姿が見える。
さっきの子を更に黒くした感じの子がそこに立っていた。
「君は?」
「俺はあいつのもう一つの人格みたいなもんだ。」
もう一つの人格、それがなんでここに残ったのかがわからない。
「俺はあいつの眠ってた一年で生まれた存在だ。」
「あの一年やっぱりなにかあったんだね。」
私が用意した情報になにもなかった空白の一年、それを知る存在。
(知りたい。)
「なにがあったの?」
単刀直入に聞く。
「はっ、なんで教えなくちゃいけないんだよ、どうしても知りたいなら俺を楽しませろ。」
そう言って黒い彼は構えた。
「戦えってこと?この空間で私に勝つ気?」
ここは私の空間、ここでは私は死なないしなんでもできる。
「そうだが?」
「しょうがないな、死なない程度で遊んであげるよ、でもその前に君名前は?」
ずっと名前がわからないのは不便なので彼に聞く。
「それは、俺に攻撃当てられたら教えてやるよ。」
そうして黒い彼との戦闘が始まった。
亜人、初めて見たけどとてもかわいい、けど目に光がない、毛もボサボサで服装もボロボロで所々穴が開いている。
そして首輪がついている。
とてもいい状態とは言えない。
「おい、お前は誰だ。」
後ろから声が聞こえた。
振り向くと無駄に高そうな服を着ている男とその従者のような男が二人立っていた。
足元には男が死んでいる。
その男も高そうな服を着ている。
(お貴族様って感じだな。)
「おい、聞いているのか。」
裕福そうな男が俺に近づいてきた。
「なんですか?」
とりあえずは下手に出て相手の様子を見る。
「お前は誰だって言ってるんだよ。」
裕福そうな男が怒鳴りだした。
(うるさいな。)
「僕は、リンって言います。」
俺は自分の名前が嫌いなので、ちょうどいい機会だから名前を変える。
ちなみにリンとは今思いつきで言っただけで特に理由はない。
「お前、今どこから出てきた。」
(名前言ってやったんだから名前言えよ。)
「僕にもわからないです、いきなりここにいて。」
とりあえずは適当なことを言って情報を得たい。
「そうか、じゃあ今お前がどうなっても誰も困らないな。」
裕福そうな男が後ろの従者に合図を送る。
「仕事なんでね。」
従者の一人が近づいてきた。
(駄目か、なら。)
「あ、あの、ちょっと待ってください、どういうことですかそもそもここはどこなんですか?」
「ふん、今から死ぬんだから知ってもしょうがないだろ。」
裕福そうな男が話終えると従者の男が俺に殴りかかろうとする。
(OK準備は終わった。)
俺はそのまま立ち尽くす。
「な、なんだこれ。」
従者の男の腕が俺に当たる直前で止まる。
「ぐあぁぁ。」
従者の男が叫ぶ。
腕時計からは血が流れている。
(へー、なかなか強いパンチじゃん。)
「お前なにをした。」
裕福そうな男が驚きながら俺に聞いてくる。
「別に、ただ魔力で壁作っただけ、少し固めにしたからそいつは壁を本気で殴った感じになってんだよ。」
さっきここがどこか聞いた時に魔力の使い方をなんとなく理解して出来る範囲のことをした。
とりあえず出来たのは魔力を放出して硬さを変えるぐらいしか出来なかった。
「な、魔力で壁を作る?そんなこと出来る訳ないだろ、そもそも魔力だけを外に出すなんて出来る訳がない。」
「お前の見解だけで語るなよ、出来るんだからしょうがないだろ。」
俺は逆に魔法の使い方がまだわからない。
「なら、お前だやれ。」
裕福そうな男がもう一人の従者に指示を出す。
「はい、お前のそれ結局直接殴るから効果があるだけで魔法には効果ないだろ。」
そう言って杖を取り出した。
「くらえ、ファイヤーアロー。」
(え、やば。)
従者が放った魔法が壁を壊し俺に直撃して土煙があがる。
「はは、どうだざまぁみろ、調子に乗るからこうなるんだよ。」
土煙がおさまる。
「なんで。」
裕福そうな男が絶句している。
「いや、ちょっと驚いたよ、まさか魔法使うのに詠唱必要とか、無詠唱で出来ないの?」
どうやら俺には弱い魔法は効かないようだ。
魔力が高すぎて漏れ出る魔力で相殺してしまうらしい。
「無詠唱なんて、出来る訳ないだろ、そんなの国に一人いるかいないかのレベルなんだから。」
従者の男が興奮気味に言う。
「へー、じゃあやってみよ。」
俺はさっきからずっと魔力の流れを見ている。
これは目に魔力を集中するだけで出来るからお手軽だ。
それにより魔法を使う時の魔力の流れはわかったから真似してみる。
(こんな感じかな。)
手に魔力を流したら、さっきの魔法、ファイヤーアローが出た。
「無詠唱だと。」
従者の男がそれだけ言って焼ける。
あまり魔力は流さなかったから死んではないと思う。
「な、なんなんだお前は。」
裕福そうな男が尻もちをつき後ずさる。
「さっき言ったろリンだよ。」
俺は裕福そうな男に近づく。
「なぁ、いくつか約束してくれればお前ら帰っていいぞ。」
「な、なんだしてやるから早く言え。」
(ウザ。)
正直今すぐ殺したいけどもう少し利用したい。
「まず俺のことは誰にも言うな。」
勇者の封印を解くだけなら別に目立つ必要もないし、目立ちたくない。
「次にさっきからなんの反応もないそこの亜人はなんなんだ。」
この状況に見てもさっきから微動だにしていない。
「あいつはそこで死んでる奴の奴隷だった奴だ、そいつが死んでたからタダで奴隷が手に入る予定だったんだよ。」
(そこに俺が転移してきたのか。)
「奴隷の主人が死んだら奴隷はこうなるのか?」
俺は亜人の子を指さしながら言う。
「そうだ、奴隷は主人に絶対服従、嘘もつけないし主人に危害を加えようとしたらその時点で死ぬ、そして今回みたいに主人が事故などで死んだら奴隷はなにも出来なくなる。」
なんとなくはわかった、もうこいつに用はなくなった。
「じゃあもういいや、行っていいよ。」
俺は手で追い払うようにして言う。
「次に会ったら覚えていろよ、起きてついてこい。」
裕福そうな男が倒れている従者に向かって怒鳴る。
従者の男達が立ち上がりついて行く。
去って行くのを見届けて俺は亜人の子に近づく。
「もう二度と会うことはないよ。」
近づきながら離れて行く男達に向かって言う。
「奴隷の主人登録ってどうやるんだ?」
奴隷の契約も契約の魔法なので目で流れを見て繋がっているところを探す。
この子を初めて見た時に契約魔法の流れは見ておいたけど魔法の使い方がわからなかったからなにも出来なかった。
でも魔法の使い方がわかったのでさっきの男達に契約の魔法の簡易版を作って別れる時にかけた。
内容は俺のことを喋ろうとしたら死ぬっていうのと俺に嘘をついてそれを俺が嘘だと認識した時に死ぬっていうのだ。
「見つけた。」
そんなこんなで奴隷の主人登録の方法がわかった。
首輪に自分の魔力を流すか登録したい人を魔力を持つ人が仲介して魔力を流すかって感じみたいだ。
「結構簡単なんだな。」
俺は軽く魔力を流す。
「これでいいのか?」
亜人の子を見ると目に少し光が戻る。
「あ、あなたは?」
怯えた声で聞いてくる。
「俺はリン、お前は?」
「わ、私は決まった名前がありません、ご主人様が決めるので。」
(完全に怯えてんな。)
「この場合って俺が主人になるのか?」
「首輪に魔力を流してもらってもいいでしょうか。」
俺は首輪に魔力を流す。
「んっ、こんなにもったいないです、でも貴方様がご主人様です。」
魔力を流した瞬間なまめかしい声がしたが俺が主人でいいらしい。
「そっか、じゃあこれからよろしく。」
俺はそう言って頭を撫でようと腕を伸ばす。
「っ!」
亜人の子が身を引く。
(人の手が怖いか。)
「ごめんなさい、私。」
亜人の子が完全に怯えて今にも泣き出しそうになっている。
「いいよ、いきなり撫でようとした俺が悪いんだから。」
「あの。」
亜人の子が声を震わせながら喋りかけてくる。
「なんだ?」
「私の前のご主人様はどうなったんですか?」
俺は横にズレる。
「っ!だから私は。」
死体を見て全てを察したようで少し落ち着いた。
「あれって、事故で死んだのか?」
死体を指さして聞く。
「いえ、お貴族様がいきなり私を寄越せと言ってそれで。」
亜人の子がまた元気がなくなっていく。
(あいつは嘘をついたのか、残念。)
「とりあえずお前の主人登録したけど別にいつでも解除は出来るから。」
この魔法の解析は終わっているから解除もかけ直すことも出来る。
「私、行くところがなくてなんでもするので私を捨てないでください。」
亜人の子が腕にしがみついて縋るように言ってくる。
(これも嘘じゃないんだよな?)
正直俺は今なにも信じることは出来ない。
もう、少しの期待をしない。
「わかった、しばらくは一緒にいよう。」
俺が嘘を見抜けるようになるまではなに一つ信じることはしない。
「ご主人様、よろしければ私に名前をつけてもらえないですか?」
「忘れてた、じゃあスイで。」
また、なんとなく頭に浮かんだ名前をつけた。
「スイ、珍しい名前ですね。」
「そうなのか?」
正直この世界の名前の普通がわからないから基本和名に近くなってしまう。
「でも、好きです、この名前。」
スイが笑顔で答えてくれる。
(気を使わせたな。)
「行くか。」
「はい。」
俺とスイは二人で適当に歩きだす。
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