第4話 友達のところ

 木の幹に小さく焼け焦げた跡ができた。首にロープを付けられ、地面に頭をつけて震えているルペ。

「さっさと立て! また撃つぞ!」

 ルペは泣きながら引っ張られるままに歩き始めた。

「人のようなクマで売れば、高く売れるってよく思いついたな」

「だろう。危険なことをしなくても、金ができるならそれに越したことはないと思ってな」

 金儲けができると野太い声で笑う狩人たち。すると、彼らの近くの茂みが激しく動いた。すぐに狩人たちは猟銃を構える。茂みから出てきたのは息遣いが粗いイズたちであった。

「なんだ。女とガキか」

「イズーしゅーいち」

 イズはロープでつながれているルペを見ると、すかさずロープを持つ狩人の手首をつかんだ。

「そのクマは私の友人なんだ。ロープをはずしてもらえないか」

 つかまれた狩人はイズの手を振り払った。

「悪いけどこのクマはおじさんたちのだから。お嬢さんはさっさとそのガキを連れて村に帰りな」

「そうそう。この森はこんなクマとか凶暴な狼とかいるから、ママやパパが心配しちゃうよ」

 狩人たちは全くイズの話しを聞こうとしない。自分たちを馬鹿にする狩人に怒った秋一は、ロープを持つ狩人の足を思いっきり踏みつけた。痛いと身を屈めたところで、秋一はすかさず狩人のすねを蹴る。狩人の手からロープが放れた。それを見たイズももう一人の狩人を銃で殴った。不意をつかれ地面にうずくまる狩人にイズは銃口を向ける。

「女、子どもって甘く見ていたら痛い目をみるぞ」

 イズにやられたことに腹が立った狩人は、イズの銃をつかみ反撃をしようとした。

「イズをいじめるやつは僕が食べてやる!」

 と、ルペは両手を挙げ狩人たちに迫っていった。さっきまで命乞いをしていたクマとは思えない迫力で迫ってくるクマを見て、狩人たちは銃を置いて走って逃げていった。フンとルペは狩人たちが逃げていった方向に向けて胸を張って腕を組んだ。

 そして、イズたちとの再会を喜ぼうと振り返ると、猟銃の柄の先でお腹を突かれた。

「痛いよーイズ」

 お腹を抱えながらイズを見ると、イズはルペを射抜くような視線でにらみつけていた。

「お前は少し自覚しろ! 何のために村を出てきたと思っているんだ!」

「ご、ごめんなさい」

 村を出てから初めて、イズがルペを怒鳴った。ルペはおどおどしながら、ただひたすら頭を下げて謝ることしかできなかった。その様子を秋一はいい気味だとみている。


目的地の生産地まであとわずか、その間にルペはイズの機嫌を直して、笑顔でフェアリービーンズに帰れるのだろうか。



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フェアリービーンズ 火月未音 @hiduki30n

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