第13話

「やめてください、黒沢さん!私が勝手に言ったことですから…坂下さんは何も知らないし、関係ないので…」


突然、自販機の陰から真由が顔を出す…。

色白の顔が、不安そうに俺達二人を見つめている。


普通に、驚いた…

話をどこからどこまで聞いていたのか、そのタイミングはわからない…。


「栗原さん!?

なんだよ、このわけわからん状況…は~~ テンション下がった ……

もう二人で…勝手にやってくれよ…」


黒沢先輩はバツが悪そうに舌打ちをして、その場をすぐに立ち去ってしまった…。


そこに残された、真由と俺…。


「ごめんなさい、坂下さん…私のせいで…」真由が俺に深々と頭を下げる。


「いえ… あの… 別に… 」

彼女が何を考えているのか…わからない…


その日はお互いに気恥ずかしく、まともに顔を見ることが出来なかった…。


だが間違いなくその日のことがきっかけで、

それ以降、お互いがお互いを意識するようになり、俺たちはいつしか付き合いを開始し、最終的に結婚するに至った…。


黒沢先輩は後日、あれは完全に俺が痛いキューピッド役だったなと、笑ってくれたっけ。


あの頃の俺は、誰もがうらやむ美しく明るい真由と結婚出来て、本当に幸せだった。



ただ、真由の家族に… 

兄である男に対して、感じた、

     

 一つの違和感みたいなものを、残して…。




 

 





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