第2話

茉優子は、名前に入っている「優」という文字通り、とても優しい女だった。


最初は緊張していたのか口数も少なく、極端に大人しい性格なのかと思っていたが、そんなこともなく、割と明るく、朗らかな性格。

誰に対してもにこにこと微笑み、どんな時も穏やかな態度で接するため、およそ茉優子のことを嫌うような人間はいないのではないか…そう、思った。


つまり、人が良い。

誰からも好かれる人間、というところか。


当然、すぐに俺も好きになった。


茉優子と話しているだけで、なんとなく心が落ち着く。

俺が話している途中に、決して強引に言葉を被せてきたりはしないし、真剣に、真っ直ぐに俺の目を見つめながら話を聞いてくれる。


まさに、典型的な聞き上手。

人に言われて気づいたのだが、どうやら俺にもそういう性質があるらしく、彼女を見ていてその意味がよくわかるようになった。


茉優子も同じだ。


急かすこともなくゆっくりと話を聞いて頷いてくれるし、ただ聞くだけではなく、相手の話をさらに深く、引き出して広げてくれる。

だからいつも聞き役に回る俺が、茉優子にだけは自分のことを少しずつではあるが話せるようになっていった。


俺と彼女は、こんな風に…

決して単なる身体の関係から始まったのではなく、そういう…心の繋がりみたいなものから始まった。


だからこそ、罪だ…


そう言われても仕方がないかもしれない。

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