六杯目 新しい冒険の始まり(1)
王都のはずれ、裏街通りの酒場は昼夜を問わず冒険者達で賑う。
店が閉まっているところを見た者はいない。
冒険者達が集い、旅立ち、運が良ければ帰ってくる。
ここは英雄亭。
死者を
*
ゴトリ。
喧騒の中で、なぜかその音は明瞭に聞こえた。
椅子、それも
イヤな予感がして青年が振り向くと、今まさにあの男の手から放たれた杯がまっすぐ飛んで来ていた。
とっさに顔をかばった腕に当たり、杯は床に落ちた。
冷や汗を浮かべつつ、青年は男に向かってニヤリと笑った。
コーン。
その頭に天井近くまで舞い上がっていたもう一つの杯が跳ねる。
男は青年に向かってニヤリと笑った。
「二つは卑怯だ」
唇を
「ダンジョンで
「ただの飲んだくれがダンジョンを語るな」
「俺にとっては
「ごまかすな。冒険者じゃないのに
青年が首にかけた
男は無言で
緩めた手から流れ落ちるスピガチェーン。繊細な音を
出来上がったきらびやかな鎖の玉座に
そこにはクラスやレベルが打刻され、月桂樹の葉を模した
「
木片を紐でくくっただけの
青年は祖父の亡霊でも見たような目で黄金の
「本物なのか……?」
「凹凸の写しがギルドにある。確かめてみるか?」
青年は
「
言いながら青年はそっと自分の
「ゴールドランクになったのは別のギルドだ。それにギルドは窓口になっているだけで、条件はどこでも変わらん」
「条件って?」
「冒険者の価値そのもの、つまり
また
「
「こんな板切れに
『おまえには買えないだろう?』と言われた気がしたのは青年の被害妄想か。
「
「金貨一〇〇〇枚」
ぞんざいに置かれた金色のタグに青年の目は釘付けになった。これ一つで五年は食べていける。
「どうせ汚い手を使ったんだろ」
声に
「人聞きが悪いな。『工夫』と言え」
男はいつものように間を取った。焦れる青年を見ながら飲む酒は格別。
「ギルドに国から
「規模って、冒険者の人数か?」
「最初はそうだった。だがそれだと頭数さえ揃えればいい。ギルドは
主な収入源だった名ばかり冒険者は
「そうか! ギルドが
「それではランクの意味がなくなる。ギルドが
青年は口をとがらせつつ、男に先を
「俺がいた
怪しい。この男がガラクタに銅貨一枚出すはずがない。
「見せてくれ」
男は天井に向かって両手を広げた。
「もう持ってない」
「金貨一〇〇〇枚と引き換えにした物をあっさり手放したのか!?」
「質屋に持っていったら、
「どこって、絶対『
男の口角が少し上がった。それが答え。
「ギルドが
「ギルドはチンケなガラクタしか配っていない。いくら貸して、いくらで売るかは質屋の自由だ」
屁理屈だ。しかしそれを否定できない自分に青年は腹が立った。
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