美月、ゲームで勝てたらお願いを聴いてあげるよ

 今日は僕の部屋で、妹の美月みづきとレースゲームをすることにした。

腕前より、良いアイテムが使えるかどうかが重要な、有名な某ゲームだ。


今回、始める前に美月が変なことを言ってきた。

「あたしが兄ちゃんに勝ったら、あたしのお願い聴いて」と。


どういうつもりなのかわからないが、僕が負ける可能性はほぼない。

どのジャンルも、僕の方が上手うわてだからだ。


美月はドリフトが苦手なので、コーナーを曲がり切れないことが多い。

そうなると、減速したり場外に落ちて引き上げてもらう事になる。


そのタイムロスのせいで、順位が上がらないのだ。


アイテム運が悪すぎると負けるかもしれないが、考えにくいことに変わりない。



 レースが始まった。3周終了時点の順位で決まる。

CPU含めて12人でレースするから、アイテムの応戦が激しい。


3周目に入った時、僕は2位、美月は8位だ。

美月はアイテムがなかったら、絶対ビリだな…。


終盤になり、ようやく1位を抜かせると思った時

赤い甲羅が僕の邪魔をする。しかも2度も。


それだけでも数人抜かされたのに、ドリフト中に緑の甲羅が当たってリズムが崩れ

かなり減速する。…さっきからツイてないな。何でだろう?


極め付きには、美月が引いた自動で進むアイテムに轢かれる始末。

終盤でこれでは、逆転不可能だ。諦めるしかない。


結果、僕は9位、美月は7位でレースが終わった。



 「やった~、あたしの勝ち!」

美月はとても喜んでいる。


今回は完敗だな。潔く認めよう。


「兄ちゃん、あたしが勝ったからお願い聴いてね」


「良いけど、簡単な奴で頼むよ」

高価な物を買って、とか言われても高1の僕には無理だぞ。


「…あたしに『好き』って言って」


「ん? そんな事で良いの?」


「うん」


「美月、好きだよ」


「もっと♪」


「好きだよ」


好きを2度聴いた美月の顔は、かなり赤くなっている。

可愛いけど、何でそんな反応になるんだろう?


「美月、それぐらいならいつでも言ってあげるよ」


「ホント?」

目を輝かせる美月。


「ああ」


「なんだ。頑張って損した」

何故か拗ねる美月。


好きに、そこまでの価値があるとは思えないけど…。

この好きはLOVEではなく、LIKEなんだから。


「もう1回レースしようよ、兄ちゃん」

待ちきれない様子で急かしてくる美月。


「うん、やろうか」


美月のよくわからない態度に疑問を抱いたけど、すぐに忘れて再戦した。

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