美月、何で僕の履歴を気にする?

 妹の美月みづきが、僕のパソコンの履歴の確認方法を友達に聴いて実行してきた。

「好きな人のことを知るのは、履歴を見れば良い」と言ってたが、どういう意味だ?



 翌日、いつも通り僕のパソコンを使いに来た美月。

昨日のようなミスはしない。既に履歴は消してある。


僕は漫画を読み始めることにした。


その途中で美月が「あれ?」と言い出した。何だろう?


「どうした? 美月。なんかトラブルか?」


僕はパソコンをいじっている美月に、ベッドに転がった状態で訊く。


「兄ちゃん。昨日より少ないんだけど…」


意味が分からないので、美月のそばに行く。


美月は再び履歴一覧を開いていた。美月が開いたページの履歴しか表示されていない。というのはそういう事か。


「美月、昨日言ったよな? 『履歴には秘密が詰まってるから、勝手に観るな』って。忘れちゃったか?」


美月は小3。僕は高1だぞ。怒るのではなく、優しく語りかけないとな。


「そうだった…」

そうつぶやいた美月は、僕の部屋から出て行った。


トイレかな? なんか用事があって出た感じにも見えたけど?



 美月はすぐ戻ってきた。1冊の本を持っている。


「それ何?」

僕は美月に確認する。


「日記帳。これを兄ちゃんに見せれば、兄ちゃんの履歴を見ていいんだよね?」


自分の秘密を見せれば、他人の秘密を知れると思っているのか。


それにしても日記帳か。美月の歳だと珍しいよな?

母さんが書いているのを見たことあるけど、教えてもらったのか?


それよりも美月の態度が謎だ。僕の履歴に執着する理由がわからん。


「美月。僕の履歴を見たい理由は何なの?」


「昨日言わなかったっけ? 『好きな人のことを知りたい』って」


「美月は僕のことが好きなの?」

一応訊いておくか。


「うん♡」

笑顔で答える美月。



 美月が言う好きは、英語で言う『Like』だろう。『Love』じゃない。


「そうか。僕も美月のことが好きだよ」

紛れもなく本心だ。


「本当?」


何で顔を赤くする?


「うん。本当だよ」


それを聴いた美月は、さっきより顔を赤くし

「う~」と可愛くうなりながら、日記帳を持って僕の部屋から出て行った。



あれぐらいの歳って『好き』という言葉に弱いのかな?


僕はパソコンの電源を切り、再び漫画を読むことにした。

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