東山兄妹編

美月、何で履歴を確認できるんだ?

 「兄ちゃ~ん。パソコン使わせて」

妹の美月みづきが僕の部屋にノックなしで入ってきて言う。


「いいぞ。電源のつけ方はわかるか?」


「むぅ。いくらなんでも、それぐらいは大丈夫だもん」

美月は頬を膨らせる。可愛いけど、子供っぽいぞ。



美月は小3。僕、一樹かずきは高1。かなりの歳の差兄妹になる。

でもそのおかげか、兄妹喧嘩をした記憶がほとんどない。


美月がわがままを言っても、簡単に受け流せる。

歳が近かったら、我慢できないかもしれないな。



美月が僕のパソコンを使いたがる理由は、学校のプログラミング授業対策だ。


父さんは多少パソコンを使えるけど苦手らしい。

母さんに至っては、マウスすら持ったことがないとか。


そんな両親の影響か、美月はパソコンを使うのが苦手だ。

プログラミングは、パソコンスキルがないとできない。


なので、僕のパソコンを使ってパソコンに慣れようとしている。

とはいえ、難しいことはしない。内蔵ソフトで遊んだり、検索するぐらい。


美月がパソコンを使っている間、僕はゲームをしたり漫画を読む。

時々見守ったりするが、退屈なので基本的にはしない。


父さんのパソコンでも問題ないはずだが、父さんが嫌がるので

僕のパソコンを美月に使わせている。損な役回りだけど仕方ないかな。



 そんなある日、いつものように僕のパソコンを美月に使わせる。

僕はうろ覚えになっている長編漫画を復習しようと、漫画を一気読みしていた。


そんな時だ。僕のパソコンから突然喘ぎ声が聞こえた。

僕は急いでパソコンに近付き、喘ぎ声の原因を探した。


どうやら、美月が履歴に残っている、僕が観ていたエロ動画を再生させたようだ。

教育に悪いので、美月が使っているマウスを強引に奪い、さっさと閉じる。


エロサイト自体は、男なら多くの人が見るだろう。

その履歴が残るのは自然だ。


問題は、美月が履歴を確認できたことだ。

素人が履歴を確認できるだろうか? 不可能ではないけど、厳しいだろう。


「美月、履歴を確認する方法をどこから聴いたんだ?」


「えーと…、友達から聞いたの。好きな人の事を知るのは、履歴を見ればいいって」


何故か顔を赤くして言う美月。好きな人って誰のことだ?


美月に履歴を見られるのは予想外だが、そういうことをするのがわかれば

対策は簡単だ。こまめに履歴を消す。それだけだ。


「そうか…。履歴は秘密が詰まってるから、勝手に観るのは感心しないな」

こう言っとけば、他の人のパソコンの履歴を見ることはないだろう。


「そっか…」

美月はそうつぶやいた後、僕の部屋から出て行った。



一体何だったんだ? …気にしなくて良いか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る