妹は提案する

 俺が住んでいるあたりで友達と遊ぶことを理由に、誘ってきた椎名さん。

舞が俺を見つめる中、どうすれば良いだろうか?



【ごめん。明日は用事があるから…】


送信っと。


俺は椎名さんの誘いを断った。


「兄さん。私を選んでくれたんだね。好き♡」

抱きついてくる舞。胸の感触が伝わり頬が緩む。



この件、舞に関係なく悩む話なんだよな。

というのも、椎名さんとは隣の席になってから連絡先を交換した。


それ以降も学校で話すことはあっても、連絡先を利用した連絡は数回しかない。

ぶっちゃけ、仲が良い訳ではない。


それに、彼女の友達が誰かがわからない。そんな状態で行って楽しめるだろうか? 甚だ疑問だ。



再び着信音が鳴る。椎名さんからだ。


【そっか~。残念。また誘うね】


椎名さんの返信を、鬼のような形相で見つめる舞。


「大丈夫だろう。これはただの社交辞令さ」


「うん♡」

舞は俺のTシャツに顔をうずめてきた。


…と思ったら、すぐに止めた。何がしたいんだ?


「兄さんのニオイがほとんどしない…」

しょんぼりした顔で言う舞。


「俺、風呂上がりだし。っていうか、俺のニオイを嗅ぎたかったのか?」


「そうだよ。好きな人のニオイを嗅ぎたいのって普通でしょ?」


今は夏休み中。夏の間は、かなり汗をかく。

そんな状態でもニオイを嗅ぎたいのか?


「…これ以上お風呂に入るのが遅くなると、お母さんに怒られちゃう。入ってくる」


「ああ。ゆっくりしてこい」


舞は俺の部屋から出て行った。



風呂の順番は、父さん・俺・舞・母さんとなっている。

父さんが仕事で遅くなる場合は、俺が最初になって、父さんが最後になる。


今思えば、舞が俺を嫌っていた時も、この順番は守られていた。

本当に俺が嫌いであれば、俺の後の風呂も嫌がるはずだよな。


俺がしっかり舞を見てれば、舞はあんな風にならなかったかもしれない。

…今日は色々あって疲れた。もう寝よう。



 次の日、朝食を終えて自室に戻ってきた俺。

昨日、結構夏休みの宿題をやってしまった。ゲームも気分が乗らない。


どうしよう、やることがない…。


その時、扉をノックされた。


「兄さん。私」

舞か。パソコンの履歴チェックに来たか?


「入って良いぞ」


舞が俺の部屋に入ってきた。


「兄さん、今日の予定は決まってる?」


「ないぞ」

今日どころか、夏休み中ずっとないぞ…。


「だったら、ネットで服を買うのを手伝って欲しいの」


舞は俺のパソコンの履歴をチェックできる。

なので、知識は素人ではない。この場合の手伝いは、だ。


「俺、センスに自信ないんだけど。舞の役に立てるかどうか…」


「私は兄さんの意見が聞きたいの。兄さんが選んだものなら、何でも着るよ」


何故そこで頬を赤くする?


「そこまで言うならわかった。手伝うよ」

どうせやることないし…。


「じゃあ、私の部屋に来て」

そう言って、舞は先に自室に戻っていった。


最後に舞の部屋に行ったのって、いつだったかな?

意識するな。平常心だ、俺。

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